十数年間、無料電話がん相談を受け付けてきました。
午後から深夜まで受け付けていて、延べ人数はかなりの数になりました。
ところが、わたしが入院したり、あちこちの様態が悪くなり、午後8時から
10時までと受けつけ時間を短くしたこともありました。
その後、新型コロナの感染を怯えて、毎月開催されていた「がんサロン」も
休止しております。
いつの間にか、電話相談も、日本がん楽会のメンバーの紹介という形で相談電話が
ありますが、メンバー紹介以外の相談電話は途絶えておりました。
ところが昨日の夕方、固定電話があり受け取ってみると「がん相談をしていただけますか」とおっしゃる女性の声が。
声が低く聞こえにくいのでテレビも消したのですが、本当に聞こえにくい。
話すうち、彼女は山口県からかけておられて、ガラ系の電話らしい。それが原因かどうか分からないが、とにかく聞こえにくいのを必死で聞き取りました。こちらの固定電話はいつもよく聞こえるのですが、彼女の話が聞きにくい。
だんだんと、内容が分かってきたのは「私は山口県に住んでいて、乳がんがんじゃです。周囲に人がいない環境なので、だれかと話がしたいのだが、人と会うこともない。
NPО団体のいくつかに電話をして、こういう人のために電話で話してくれるようなところがありませんかと、問い合わせを繰り返し、やっと「日本がんらっかいさんなら」と、この電話番号を教えていただき、おかけしております。」ということだった。
ご主人と話すこともないのですかとお聞きすると、「主人は、どんなことを話しても
一度も(そうだね)っていう一言を一度も言ってくれませんと。
では、わたしがやっていることを教えてあげましょうと、、、、。
「私はね、ずいぶん以前から、トイレの鏡に向かってしゃべっているのです」と。
そしてね、「おい、そこのおじん、今日は元気がなさそうだな」とか話しかけるんです。そして「お前もいっぺん笑ったらどうや」と呼び掛けて一緒に笑うのです。
毎日、鏡の中の自分といろいろをしゃべります。そして大きな声で笑うのです。
私がトイレから出てきたときの表情はいつも笑顔だと思います。
心に笑顔がないと、がんとは戦えませんよ。不満があれば、がんはつけあがってくる。
癌と戦うには』笑顔が最高なのですよ。お教えした。
お元気そうですが何歳ですかと問われたので、89歳ですと答えると、こんな素敵な話を伺ったのは初めてです。 ガラ系携帯電から、聞こえやすいものに変えますから、また電話してもいいですかと仰るので」いつでもどうぞとお返事しました。
この相談を受けて考えたことは、がん患者は二人に一人と言われるこの時代に、話し相手になってくれる組織も少ないということは情けないですね。
総理大臣をたくさん出している山口県の人たちに申し上げたい。 一番苦しんでいる人たちに目を向ける組織つくりをしてくださいと。