中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

タンパク質を考える(12)ミトコンドリア

 細胞の中で重要な働きをしているミトコンドリアについてみてみましょう。

細胞のエネルギー通貨ともいえるAPТがここで合成されています。外膜と内膜

の二枚の膜に覆われています。

 ミトの意味は糸のように見える、コンドリアは粒のようにみえることから

から名付けられたようです。一見して糸のように見えるらしい。

 ミトコンドリアというのはしばしばニュースにも現れますので、案外よく知られた

名前です。 なぜならば、ミトコンドリアは細胞の歴史とも深い関りがあるからです。

 ミトコンドリアは、何億年も前に、ヒトが誕生する先祖動物の時代に、その体内に

入り込み、そのまま共生するようになったバクテリアだと考えられています。

 ミトコンドリアは、自分自身の遺伝子を持ち、内部で独自にタンパク質をつくり、

その上、分裂まで行う。

 ヒトの遺伝子は、父親に由来する精子と母親に由来する卵子が一つに合わさることで

出来ているために、子供は両親の形質を受け継ぐ。一方で、同じヒトの細胞の中にありながら、ミトコンドリアは、その遺伝子を母親からしか受け継がないのです。言い換えれば、父親のミトコンドリアは子供には受け継がないのです。

 そのため、父親のDNAは組み換えがほとんど起こらず、ほぼ変わらない形で延々と

受け継がれていく。

 一方で、ミトコンドリアには、DNAの複製に伴う間違いや変異を修正する機構がなく、生じた変異は蓄積しやすいのです。 それ故に、ミトコンドリアの遺伝子の変異を

辿ると、母親のルーツを知ることが可能になる。 ですから、人類の起源がアフリカにあると決定づけたのも、ミトコンドリア研究によってのものだった。

 およそ20万年前、現在の各人種への分岐が発生したという研究もミトコンドリアの研究から編み出されたものなのです。

 ミトコンドリアが二重の膜で覆われているというのは、進化が進んだ細胞ともいえるのです。

 私たちヒトが生まれる以前には、地球上に酸素がありませんでした。やがて、藻類が

光合成の段階で酸素を産出するようになり、酸素を利用するバクテリアを体内に置いておくことに意義が見いだされてミトコンドリアを体内に置くことになったのだろうという推測がある。

 いずれにしても、ミトコンドリアは、人類が誕生するずっと以前に私たちの祖先動物の体内にいたことになる。 古いお付き合いなのです。 ミトコンドリアが細胞になかったら、人類はエネルギーを得ることが出来ず、命を維持できないのですから、小さな小さな細胞の中の、もっと小さい糸のように見えるミトコンドリアによってエネルギーをもらっていることに感謝、感謝ですね。