子供のころに俺は酒を飲まないぞと決めたのにはわけがある。
祖祖父、祖父が大酒のみだったということもあるが、祖母が16歳で
産んだ(当時はこの年齢で産むのは普通のことだった)私の父は、
可愛がられて育てられたこともあり、大酒のみにわがままという性格
が加わって、くせの悪い酒だったという印象がある。
それが原因で、私が3歳にならないころに母と別れたらしい。
その事情を知った時から、俺は酒を飲まないぞと心に決めたというわけ
なのだ。
酒を飲む機会というのは、意外なほど多いので、その度に断わるのは
苦痛でもあったが、初志を貫いた。そのために2次会の付き合いもしかった
ので、周囲からは疎ましく思われていたかもしれないと、今になって思う。
40歳の時、胃の具合がよくないので診てもらったら「胃がんの疑いあり」
ということで、毎月のように胃カメラを飲まされた。
のど元を通らない。むりやり「飲まされた」という印象だった。
胃カメラ検査が続けられた結果、がんではなさそうだと言われたが、当時の
がんに対する医療の能力はその程度だった。
がんかもしれないと言われた瞬間に、それじゃ・・先祖代々大好物だった
酒というものを飲んでみようと思い立った。
(続く)