中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

がんの告知後1年間の自殺は20倍

 毎日新聞夕刊(4月22日)のトップ記事は「がん患者 自殺リスク20倍」だった。
 多くのがん患者とかかわっている私にはショッキングなニュースでもある。
 記事によると、「がん」を告知を受けた患者は、その後一年間に、がん患者以外の
 人たちを1とすると、23・9になることが、9年間に及ぶ大規模疫学調査によって
 明らかになったというものである。
  1年を過ぎると1・1倍と落ち着くそうであるから、告知後1年間のがん患者への
 心のケアが大切だということになる。
  「がん」の場合、あなたはがんですよと医師が患者にいうことを「告知」という。
 しかし、患者の場合は「宣告」を受けたという。
 医師と患者との立場の違いが言葉になって表れている。
 患者はがんですよと告げられた時に死の宣告と受け取ってしまう人が多いのは
 確かなことである。
  そして、「何もしなかったときは、1年ぐらいでしょう」とか「3年ぐらいかも」などという
 医師の言葉を自分の余命だと思ってしまう人が多いのも事実である。
 日本では告知の歴史が短い。西欧では早くから告知をしてきたのに、日本では
 ためらいがあって告知を控えてきたという。その背景には、今回の調査のように
 告知を受けると自殺などに追い込むかもしれないというためらいがあったからでもある。
 裏を返せば、日本人はとても心が弱い。自立心が弱い人が多い。
 今回の調査は、それを裏付けたといえるかもしれないが、だからと言って告知を
 控えたり、ごまかしたりすることがあってはならないと考えている。
 がん患者は、自分の病気についてしっかり知っていることが大事であり、知ったうえで
 治療を受けるべきだからである。
 問題は、医師の告知時のインフォームドコンセントの技量を上げることと、患者に対する
 心のケアの在り方である。
 ところが、心のケアを病院に依存できる現状ではない。日本にはその人材がとても
 少ないし、人材養成も遅れている。
 今日ある会合に出席した。その中に精神科の医師がいたが「地域のコミュニケーション
 なんかいらない」という発言に驚いたものだ。もちろん病気とか、患者とかがいるような
 席ではないが、そういうことを平然という精神科医師がいることが悲しい。
  日本のがん医療は西欧に比べて10年遅れているといわれる。しかし精神科などは
 30年以上も遅れているのではないだろうかと案じている。