中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

第2の人生(13)

 裏庭にはプールがあった。
妻は、なぜか子供のころからプールのある家に住みたいという夢をもって
いたようで、「夢は願えばかなうものね」と、とても喜んでいた。
ところが、プールの管理というのはなかなか難しい。太陽がまぶしいぐらい
降り注ぐパースでは、プールの水がどんどん蒸発してしまう。
 一日で約1センチほどが蒸発するのだが、これを水道水で補充しようと
すると、約1時間も水道を出しっぱなしにしなければならない。
 春のころに、真っ青な空にぽっかり浮かぶ白い雲が、ぽこぽこと浮いている
ように見えることがある。私は冗談に「それぞれの家のプールの水が蒸発して
雲になって浮かんでいるんだよ」というと、妻は「本当にそんな風に見えるね」
と言っていたものだ。
 毎日水道水を1時間も出しっぱなしというのは、経費面でも夏場の水不足の
おりには気が引けて仕方がなかったので、入居8年目ぐらいに井戸を掘って
井戸水を使うようにしたものだ。
 何よりもプール管理の難しさは、水質を保つことである。油断するとプールの
周囲の壁や、底まで青くなってしまう。
 日常的にプールを自動的に掃除する器具は二つある。一つはモーターで
プールの水を吸い上げて浄化タンク(砂が入っているようだ)を通してからプールに
戻す。もうひとつは、この作業を利用して、自動的にプールの周辺や底を丁寧に
掃除してくれる器具の働きだ。仕組みはよくわからないが、水を吸い上げる力を
利用して動くようになっているらしい。私は、その機器のことを「よく働く子だね」と
いって可愛がっていた。
 掃除機器が届かなかった場所などは、長いブラシを使って手で擦って清掃する。
水を毎日補給し、掃除をしても水質は保てない。
 最初のころは、専門職の方に来てもらって水質管理をお願いしていたが、6か月も
経てば、やり方が分かってきて自分でやるようになった。それでも、14年間のうち、
本当に上手に管理できたのは、最後の5年間だったような気がしている。
 カルキ(日本ではあまり売っていないが、あちらでは、10キロ、20キロと容器に入って
売っている)の使い方が難しかった。時々、プールの水を汲みとって検査に持って行き、
検査結果に従って、必要な薬液を入れて水質を保っていた。
 風が吹けば、木の葉などが大量にプールにはいる。この時ばかりは清掃に体力が
必要だ。
 こんなにも管理に時間と経費と気を使ったのに、実際に泳いだのは14年間で3度だけ
なのだ。孫たちが来たときは、毎日泳いではいたが、私は3度、妻に至っては、プール
サイドに座って足をつけただけだった。どうしてなのか・・・??夏でもプールの水は
高齢者には冷たすぎるから入れなかったということなのだ。飛びこめるほど深い(2M)
ので、プールの水温は上がりにくいということだ。
 でも、プールはリビングルームの傍にあり、毎日、朝から晩まで水面を見て暮せると
いうのは、とてもリラックスできることだった。プールは、家のどの位置にあるかによって、
プールへの思いは変わってくるだろうと思う。