今思うに・・祖父が65歳を過ぎたことだったとおもうが、
つぶやくように「齢はとりたくないもんじゃ」というのを何度も
耳にした。 わたしは当時、中学生だったようにおもうが、その
つぶやきを聞いても、そうだろうな・・程度にしか聞いていなかった。
祖父の痛みとか、辛さとかを感じることはなかった。祖父が、どんな
痛みや辛さを抱えていたのかも知らなかった。当時は町に医者は一人
しかいなかった時代で、祖父は医者に診てもらったことなど生涯一度も
なかったように思う。祖父の持病で私が知っているのは「痔」に悩んで
いたことだけだ。
私自身が80歳を超え、祖父のつぶやきが分かり過ぎるほどに実感する
日々を過ごしている。だが、私がつぶやいたとしても、まもなく60歳に
なろうとしている娘は実感としてはなにも分からないだろうとおもうのだ。
母の辛さも、実感として分かってやれなかった。今は自分がその辛さを
実感している。なってみなければわからない・・それは病気であり、痛み
であり、老いだろうと思う。そう・・なるまでは「他人事」のようなのだ。