中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

芥川賞感想(1)「スクラップ・アンド・ビルド」について

2015年7月発表の芥川賞は、 羽田圭介氏の『スクラップ・アンド・ビルド
又吉 直樹氏『火花』のダブル受賞だった。
 以前から注目されていたお笑いの又吉直樹氏の名前が発表された瞬間は
記者のどよめきが沸き起こったという。
 さて、この両作品を読んだ方がおられるだろうか。又吉氏がお笑い界の
人だということだけで、これまで芥川賞が何なのかも知らなかった人まで
本を買ったというのだから、世の中の「空気の流れ」というものは恐ろしい。
 .ここでは「スクラップ・アンド・ビルド」についての感想を書いておきたい。
この作品は、読み手によってずいぶん感想が異なるのではと思う。
私のような高齢者が読んで感じることと、若い方々が読んで感じることに
かなりの差があるかも知れないと思った。
 詳しい内容についてはここに書こうとは思わないが、一口に言うと
80歳を超える高齢者と若者世代の精神的ギャップの大きさが描かれている
と思う。選者の宮本輝さんは、作品の中にあるユーモアは、作者が計算しない
ものだと思うし、それが作品の力だというように言っておられる。
 宮本氏と違って、もっと高齢者の側にいる私にとっては、ユーモアまで感じ
ることはできなかった。ある種の刃を突きつけられている感じさえした。
 80歳を超えて病を持っている人たちの心境は、その人にしかわからない
ものであり、客観的にながめるのは難しいものだと思う。
 「その歳になってみて、初めてわかること」を高齢者が抱えていることを
この作品から読み取っていくことができるとすれば、問題提起した感のある
この作品に意義がある。