連載 なんでも ホンネ・コラム
人間には厄介なことに「コンプレックス」と「プライド」があります。
どうして厄介かというと、これさえなければ、もっと気楽に生きて
いけるのにと思えるからです。最近はプライドを持っていないのかと
思えるような新人類もいますので、誰でも持っているというのには
異論が出るかもしれません。では、動物にはないのかといいますと、
専門的なことはよく知りませんが、私の大好きな犬で申しますと、
犬達はプライドをしっかり持っているように思っています。特に
名犬といわれる50頭ほどの名犬と接して、その犬達に顕著なプラ
イドを感じました。コンプレックスがあるのかないのかはわかりま
せんでした。
さて、どうしてこの問題を取り上げたかというと、サッカーワール
華々しい彼のサッカー人生を飾る最後の試合でしたし、フランスは
優勝に向けて優勢でもありました。そんなときにレッドカードをも
らい退場させられるような、相手選手に頭付きを食らわせるという
蛮行を敢えてやったのはなぜなのかという疑問でした。早朝まで試合
を見ていた私は、あの瞬間に頭が真っ白になりました。今回のワール
ドカップを通じて、最高の選手だと思って応援していただけに彼の
蛮行を、にわかには信じ難く、また大変残念な思いで一挙に気持ちが
暗くなるのを覚えました。
相手選手から「母と姉に対する、とても言いがたい侮辱の言葉を
何度も受けた」ことが蛮行を引き起こしてしまった原因だとジダンは
言っています。事実かどうかは、今後の調査を見ないと断定できま
せんが、もしそれが事実なら、彼の行為を蛮行と非難するだけでは
納得できないものになるでしょう。たとえ、それが事実でも、世界中
で多くの人が見ている目の前での蛮行は、子供達に対する影響も考
えると、暴力は許されるものではないとする意見もあるでしょう。
ジダン選手も、その点については謝罪しています。
さて、あなたならどうでしょうか。私は若いころ、進入禁止の標識
を見落として侵入し、待ち構えていた警官に捕まりました。しかし、
どう考えても進入禁止の標識の位置が見えないところであったのと、
警官が狙いを定めるように待ち構えていたことなどから、署名を拒否
い分を認めて、標識の位置も変え、私は罰則を受けないですみました。
検事が「僅か3千円ですから、検事を煩わせないで払ってやってくだ
さいよ」といいますので、これはプライドの問題ですと答えますと、
大笑いして「そうですね」と仰いました。プライドとコンプレックスは、
いろんな局面で物事を複雑にします。国際的にも私的にもなかなか厄介
なものなのです。
私は二年前に屈辱的な言葉をある人から浴びせ掛けられましたが、
歳のせいか、おとなしく引き下がりました。このたびのジダン選手の
行為を正当化して英雄化しませんが、ある意味において、彼の名誉ある
サッカー人生を棒に振ってまで、侮辱に対して敢然と向かい合ったと
いう点では評価したいと思います。これは彼へのフアン心理なので
しょうか。それとも、多くの方の共感を得られるものなのでしょうか。