中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

私流生き方(86)

建設会社専務としての毎日。
 建設という仕事は全く経験がなかった。しいて言うならば
28歳の時にわが家を独力で建てたという実績だけである。
それでもその時の経験は全く無駄ではなかった。
 銀行筋に向けてのパフォーマンスのために私を専務にした
ようなものだから、社長の体調が次第に回復してくると、まだ
まだ若い者には譲れないと言う気持ちが強くなってきても不思議
ではない。私の仕事は、建設現場回りあり、建売住宅の販売あり
、住宅建設のための土地探しもするというなんでも屋さんだった。
 最初の年の年末に、わが家の門から玄関までの15Mの間に
マサ土を1・5Mの幅で敷き、その上にレンガを並べ、そのうえ
からマサ土でメジをした。僅か3時間ほどで雨が降ってもびくとも
しないレンガ道が出来上った。正月に社長が訪れ、それを見て
「これはどこからヒントを得たのか」と問うので、私のオリジナル
ですと答えると驚いた。
 その後、建売住宅にこの手法を多いに取り入れていたものだ。
これを読んだ方が、直ぐに理解できるとは思えないが、我ながらに
すばらしいアイディアだった。このことがあってから、社長は私の
意見に耳を傾けるようになった。それまでは建築の素人として見て
いたものが、話しを聴いてみようと言う気持ちになったらしかった。
 建売住宅は、3DKとか4DK、3LDKとかと表示する場合が
多い。本当は建築面積で表示されるのが妥当なのだが、3DKより
も4DKの方が広いような錯覚を持つ人が多い。だから建設会社は、
一つの部屋が狭くしても数字を大きくしたがるのだ。その結果、
4畳半とか6畳とかの小さな部屋ばかりあって実際は住みにくい
使いにくい家になってしまう場合が多い。もちろん家族が多い場合
などは家族数に応じて部屋数が多い方が良い場合もある。
 いずれにしても、TVのワイドショーの時もそうだったが、
消費者にとって不利益だと思われるものには抵抗感を持っていた。
特に住宅購入と言うのは一生のうちでもとても重要なことであり、
大金を投じて(または借りて)購入するものだけに、購入者に不利
益となる要素に対しては社長に強く抗議した。
 それまで社長にそのような進言をするものは誰もいなかった
ようで、社長は私の扱いに困惑していた節もある。「福祉事業で
はないのだから、会社は利益を上げなければならないのだから
・・・」と何度も私を説得したものだった。
 それでも、私の意見は次第にとりいれられていったのは嬉しい
ことであった。具体的に書くと、斜面地でもその地域の平均地価
を掛けて計算されるが、会社は斜面地を安く購入しているのだし、
斜面地にはそれだけの瑕疵があると私は考えるので、販売価格の
見直しを求めた。和室にけばけばしい色の綿壁を塗っていたのを
上品なじゅらく壁(塗り壁のために体に害がない)にするよう
提案して受け入れられた。
 会社の利益優先だけではなく、購入者のことを考慮した建売
住宅作りをとの提案は次第に実を結びつつあったが、一方では
「専務がだんだん頭を上げてきた」ことに対する社内の古株から
の反発も生まれつつあった。