中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

随筆自伝(137)私を守ってくれたのはだれなのか

ドライブ旅行―2

《ワイナリー巡り》

マーガレットリバーに向う。ワインの生産地として世界的に知られた地域なので、そこかしこにワイナリーが点在していて我々の興味をそそるが、すべてのワイナリーへ入って試飲するだけの時間的余裕がないので、目についたワイナリーに入った。

 あまり大きくないが感じの良いワイナリーだった。芸術家を思わせる雰囲気の男がカウンターの中にいてテスティング(試飲)に来ているオージーたちと楽しそうに話をしている。

壁には画廊のようにたくさんのアクリル画が掛かっていて、それには値段が付けられていた。オーストラリアの風景画だが、なかなかのもので私も欲しいなと思ったが、結構いい値段が付けられていたので諦める。

 数種類のワインをテスティングしたが、いま一つ気に入らない。女性陣は買わずに帰ろうと言うが、我々男性陣は気が弱く何も買わずには帰れない。今晩どうせ飲むのだからと1本買い求めることにしたが、このワインがその夜の食卓で一躍評価が上がって「もっとたくさん買えばよかったね」と悔やむことしきりだった。ワインは食事によって味が違うし選択も変わる。テイスティングのような場で味が分かるようになるにはまだまだ修行が足りないことを痛感した。

 マーガレットリバーの町は小さな田舎街だ。と言っても、日本の田舎街とは雰囲気が違うのだがうまく言えない。スーパーで買い物をして自分たちで食事の用意をする。そのスーパーが日本の田舎と違ってアカ抜けのした立派なスーパーだったのに驚いた。

 翌朝早く目的のワイナリーへと向かった。

当時ケープメンテルワイナリーの赤ワインが世界のコンテストで認められたと評判だったので買い求めておいたところ、友人が一緒に食べようと持って来てくれた鰻(うなぎ)を食した際のケープメンテルの赤ワインの味が絶妙で忘れられなかったので、ぜひワイナリーを訪れてみたいと思っていたのだった。

 オープンの時間にはまだ早過ぎたようなので広い敷地の中を散歩する。田仲さんの奥さんは「こんなところで1年ほど働かせてもらったら、いっぺんに英語が上達するだろうね」と言いながら敷地内のブランコをこいでいる。

ここはかなり大きいワイナリーで整備されていて美しい。テイスティングしたが田仲氏の口には合わなかったようだ。ワイン選びは難しい。自宅用に1本だけ買うことにする。

    <鍾乳洞巡り》

 マンモスケープに着いたが次のガイドの時間まで待たされる。この鍾乳洞は名前の通り大きいのだが、それだけのことで、どこにでもある平凡な鍾乳洞で少しも感動しなかった。この鍾乳洞にこりて評判の高かったジュエルケーブに行く気が起こらなくなってしまった。

《インド洋と南氷洋が接するところ》

  一路オーストラリア最南西端のオーガスタまで車を走らせる。ルーウィン岬の端にケープ・ルーウィン灯台がある。この岬の名は、1622年にこの地を通過したオランダ船にちなんで名付けられた。石灰石でつくられたこの灯台は、49メートルの高さがあり、螺旋(らせん)階段を上がっていくのはかなりきつい。この岬の右側はインド洋であり、左側は南氷洋である。そして、ここは暖流と寒流が出会う海でもある。

 私は以前、アメリカのマイアミからキーウェストまでドライブしたことがある。マイアミから車で3時間半、地図で見ると、フロリダ半島の端から海の上を国道が走っているように見える。数多くの島が点在していて、その島々を42の橋で最終のキーウェスト島まで結んだアメリカ最南端のドライブウェーである。これらの橋の中にセブンマイルブリッジという橋がある。その名の通り7マイル(11キロ)ものコンクリート橋が海の上につくられている。

キーウェストに向かって右側がメキシコ湾、左が大西洋と名付けられているが、境界線はなく、そこには紺碧(こんぺき)の海が広がっているだけなのに、「こっちがメキシコ湾でこっちが大西洋か」と感動してしまった。もちろんその美しさとともに感動したのである。その感動が忘れられなくて、3度も訪れた。

 オーガスタの灯台の上から、右側がインド洋、左側が南極海かと思いながら見るだけで感極まってしまう。

 象やライオンが住むアフリカ、とても美しいところだと人は言う。そのアフリカまでこのインド洋は続いている。ここから南極大陸まで何も存在しない南氷洋、この向こうに氷山が浮かび、ペンギンが戯れ、そして先月フリーマントルを出帆していった南極観測船「しらせ」が向かった昭和基地がそこにある。私の顔に吹き付ける風は南極からのもの?と一人感慨にふける。どうして人はこのような時に感動をするのだろう。そこには未知の世界があるからなのか、それともとてつもない雄大さに心魅(ひ)かれるからなのか。

私たちは桟橋で釣りをした。車には日本から仕入れた釣り道具一式を積んである。家内が真っ先にアジを釣り上げ、それを友餌にしてみんなで9匹のアジが釣りあげた。シマアジのお造りが最初のワイナリーで買い求めた白ワインとよく合った。大変美味だった。