中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

随筆自伝(97)私を守ってくれたのはだれなのか

           《教師の力量について考える》

 子供さんたちが通う学校の教師のことをおもい浮かべながらお読みください。

  昭和六十年十月、兵庫区の新しい校舎の建築が始まった。  

 須磨校の倍の収容能力を持つ校舎だった。 経営的に決して楽でない状況の中での新校舎確保だったので、体制強化を含めて、長田校を任せていた山下先生を須磨校の校長に任命することにし、山下校長に須磨校、長田校【予科】を見てもらい、兵庫校は私が校長兼務として直接に指導にあたるという配置替えをしたのが、六十一年の一月だった。

 新しい校舎に人材をふり分けることになる以上、現在の人材を、より向上させておかなければならない。

教育においては何よりも教師の力量が問題であり、力量のない教師によって生徒が苦しむようなことが起こらないようにと、ずいぶんと気を遣った。 教師の力量を高めることが何よりも重要な事柄だった。

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次の文章は三年目を迎えるに当たっての  「理事長通信」に書いた文の一部である。

【四月から兵庫校での授業が始まります。現在の教師の方々も、長田校、須磨校、兵庫校と三校に分かれていただきます。

新しい教師が半数を占めることになるでしょう。生徒たちにも、新入生を迎える心の準備を呼びかけるとともに、教師自身が今一度大きく脱皮して、心の準備をしてほしいと思っています。

  『理念」をよく深く理解したうえで三校に分かれないと、大変な混乱を招くことになるでしょう。 

新しい教師も、古い教師もまったく同等です。生徒の内面まで見えているかどうかで教師の力量が問われるのであって、古いか新しいかではありません。 自己改革が進んでいかどうかで

力量が問われるのです。

自分自身をごまかして、古い価値観、あるいは間違った価値観のままで生徒を指導してほ

しくはありません。

これまでにも、頭で分かったようなことを言いながら行動に問題のある教師がいましたが去っていきました。

三校に分かれると、私との接触機会が少なくなります。それだけに「理念」を正しく理解している教師が一人でも多く育ち、教師全体に理念の在り方を正しく伝えてほしいものです。

毎週のレポート提出について今一度のお願いです。

校長はじめ全員のレポート提出を義務づけることになっています。 これは初めからの約束ごとですから、提出しない教師がいることがとても残念です。なぜなら、教師自ら実行しなければ、生徒にも要求できなくなるでしょう。

レポートは「自己改革」の手助けになると思います。自分をチェックするうえで、とても役立つことを信じて下さい。易きに流される体質をそのままにしておくと、良い素質の教師までが後退するのを私は恐れています。

生徒が見えていた教師が、生徒が見えなくなったりしてしまいます。表面の行動しか見えない状態になったりします。私はそれが恐ろしいし、悲しいのです。

みんなで間違いを正していきたいし、恐れることなく注意しあえる教師集団でありたいと願っています。悩みも、苦しみも共に分かちあえる教師集団でありたいのです。

小さくまとまって、不平を言い合うつまらない教師集団にはなってほしくありません。縦割り社会でも横割り社会でもなく、血の通いあった教師集団であってほしいのです。

何でも話し合える場にしたいのです。一人で悩み苦しむことのない職場にしたいのです。

生徒の問題は、担任だけの問題ではありません。人間一人の力はしれたものなのです。自分一人で問題を抱え込まないようにしていただきたいのです。

私のところにその日のうちに情報がくるようにしていただきたいのです。担任は生徒のすべてを任されているのではなく、最後の責任はすべて私にあるのですから、教師は多くの人の助けを借りて、決して間違うことのない対処を考えなければならないのです。

誰にも相談せず一人で問題を抱え込み、私にも知らせないで間違った処置をしてしまった場合は、生徒が気の毒なことになってしまいます。教師は多くの意見を求めるべきであり、他の教師の求めに応じるべきだと思います。

間違ってはいけないのは、相談してからでないと対応してはいけない、ということではありません。 それでは優柔不断になってしまいます。その場面、場面で的確な判断をし、対処しなければいけません。 そして、自分の考え方や対処のあり方を常に他の教師に相談するなかでチェックをしてほしいのです。 私にも相談してほしいのです。

多くの応募者たちのなかから私が選んだ教師集団です。選考に間違いはなかったと自負しております。私が自慢している教師陣であるわけです。よりいっそうすばらしく成長して、日本で有数の教師集団になっていただきたいと望んでおります。どんなことがあっても、生徒を無視し「かばい合う教師集団」 はならないように、「励まし合い研鑽し合う」教師集団になることを願っているのです。

私たちが成長することは多くの生徒が救われることだ、という認識をもち続けていただきたいのです。 日々変革していく努力を続けることを強く願ってこの文章を書きましたが、一人一人がどうか私の願いを真剣に受けとめていただきたいと思います。

「理事長の言っていることは正しいことだけれど……」と 言うだけで実行に移さないのでは、何の変革も起こってまいりません。実行に移すことが変革していくことになるのです。何が善で何が悪か、 「幸せ」とはどういうことなのだろうか、と真剣に考え論議し、自分と向かい合って考えるによって変革につながっていくものなのです。

真剣さを避け、苦しさから逃れて酒におぼれる毎日からは、決して変革は起こりません。教師自らが、自分の可能性に挑戦してこそ、生徒の限りない可能性を信じることができるのです。

どうか今日から少しずつでも前進を心がけた日々を送ろうではありませんか】

 兵庫校舎の出発に向けた、教師たちへの願いだった。素晴らしい教師が多く育ったのは言うまでもない。