中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

随筆自伝(80)私を守ってくれたのはだれなのか

『理事長は根気強いですね』と、 教頭が言うが、根気ではなく、受験生に対する愛情がこれほどハードな作業に耐えさせているのだとおもった。わたしのような過去を持っているからこそ、彼らに次のチャンスを与えたいという気持ちが強いのであって、愛情生徒への愛情なくしてできることではない。

 他校を受験しても、合格する確率がないと中学校の先生に言われたた生徒たちがまず出願してくる。 だからテスト結果は一様に悪い。平成二年を例にとれば、第一回目のテストに参加した生徒が70名で、その内の55名が再試験となった。

 仮合格させた15人にも厳しい宿題をだしておいた。 試験結果は、保護者だけではなく中学校にも連絡するので、その手間が大変だった。生徒本位の教育をしようと思えば思うほどに忙しくなる。

 再試験の通知を送りますが、その際にどの強化のどの部分を学習して来てほしいと詳しく書いておくのです。教師によってはこの通知に不満をあらわにする人もいますが、喜んでくださる教師も多い。「例えば、小学校四年生の算数をちゃんと復習して再試験に臨んでほしい」などと、一人ずつに書いて送るのです。日本中の学校でこれほど手間をかけたテストをやっているところは他にないだろうと確信を持っていました。

 何度もなんども再テストの通知を受け取った教師から、「最終的にはあとから受験する生徒を優先してこの生徒たちを落とす気でないのか」 と言ったような抗議も来ます。だが年を重ねるごとにこの方法が高く評価されるようになって、中学校の教師から

『あの生徒が、顔色を変えて、勉強に取り組む姿を初めてみました。今回の再テストでは、多くのことを反省しました。わたしたち中学校の教師は一人一人の生徒を見ていなかったのですね。成績の悪い子を置き去りにしてカリキュラム通りの教育を進めていたのですね。もっと早く、彼らに手を差し伸べていればと後悔しております。いろいろ学ばせていただきました』

 このような、とても嬉しいお言葉を、多くの教師たちからいただきましたが、実はもっと根が深い問題なのだと私は思っているのです。

  これほどにしてまで入学した生徒の中にも、一ヶ月ほどすると勉強しなくなる子もいるのです。勉強嫌いは、子供が小学校三年生までに周囲の人が気がついて、勉強が好きになるようにするのが最善なのですが、多くの場合、親は教師任せでわが子の立ち位置を把握できている親は少ないものです。

  勉強という言葉にさえ反抗的になっているはずだから工夫がいります。最適者は母親だろうが、母親が読書習慣を持っていないようでは(能動的な質問) さえできないだろう。

 教師は忙しすぎる。日本の制度下では、何もかもが教師の仕事になっている。 欧米のように、学校カウンセラーがいて、生徒たちの相談に乗ってくれる人が必要だろうとおもっています。

 また、クラブ活動が教師の担当になっているのもおかしい。 最近では、クラブ活動が家庭教育の代わりをさせられている。

 母親が教師に「しっかりしつけしてくださいよ」と、頼むなどということが多くなっている。中学校の在り方について考え方を改めない限り、日本という国はよくならない。本当は、政治がどうのと言うまえに、家庭教育の大切さを、どのように浸透させるかが課題だとおもっています。

このままだと日本に(人材)が育たない。使えない(人罪)が増えていくだろうと思うのです。

   《教師募集のむつかしさ》

  面接など多忙な時期だが、教師募集もしなきゃならない。新聞募集で、70人の応募があった。書類選考をしないで10人ずつすべての応募者と面接した。70人もの応募があったということは、景気が悪かった頃であったからだと思われた。

 10名ずつのグループでテーマを話し合う方式にしました。この年に、新たに18名の教師を採用し、合計23名の教師人となった。

 大きな問題は、高校教師免許を持っていることが最低条件なのですが、教科ごとにベストな採用が出来なかったことだった。

 もともと、数学、理科の教員資格を持っている人は少ない。 応募者で一番多いのは社会科免許だった。公立高校のように選り取り見取りで選ばれないのがつらいとことであった。そういう状況の中で選んだ教師だったが、面接時の印象と、その後の結果が違った人も多く混じっていたのだった。面接時に、いくら素晴らしいことを言っていても、実践ともなるとまるでできない人が多い。

  教師になりたい人の多くは社会での実戦期間が少ない人が多いというのも問題だと思える。

 素直に勉強する生徒はいいが、反発するような子は生徒じゃないと考える教師は、わたしの学校ではおられないのだった。