前回までお読みくださって、医師が言おうとしていることと
患者の受け止め方に違いがあるということをお分かりくださった
でしょうか。
実は、こういうことはとても多いのです。
患者の方や、ご家族の方から相談を受けたときに、しっかり聞いて
何度も質問をして、はじめて医師と患者の「ずれ」に気が付くのです。
ですから、患者である方が、周囲のいろんな方に話していることが
決して正しくない場合もあるのですね。
そしてその原因は、医師のコミュニケーション術の不足だと言えるの
です。医師はマニュアルに従って治療をしていきます。
1+1=2ではないのですが、幅広い視野で患者と接しようとする医師は
いまでは10%もいないのではないかと思うほど、コミュニケーションの
下手な医師が多くなっています。
それは大学教育にも起因しているのですが、医学部での文系授業を
減らす傾向にありますから、今後ますます「患者に説明するのが下手な
医師」が増え続けるだろうと思います。
さて、前回まで書いた患者さんの場合を、整理してまいりましょう。
PSAが増え続けているとはいえまだ5,7程度だと慌てる必要はないの
ですが、どうして(カソデックスが癌のえさになるからやめましょう)といった
のかが患者の話だけでは分かりません。
しかし、事実カソデックス錠からザイテイガ錠に切り替えたことは確かな
ことなのです。
そのうえ「放射線の注射をすれば直るのだから心配いらない」と、患者が
受け止めてしまうような発言をしたことも確かなことです。
患者の勘違いだとしても、それは説明不足というものでしょう。
(5に続く)