中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

西豪州・世界一美しいエスペランスの海

JPオーストラリア誌 1994年8月号掲載分
世界一美しいエスペランスの海
 
 アルバニーからエスペランスまで約480km。このたびを計画するとき、遠いエスペランスまで足を延ばす価値があるのかどうか一瞬迷った。誰もがそう思うらしくアルバニーまで行く人は多いのにエスペランスまで足を延ばす人は少ない。足を延ばすとはよく言ったもので、アルバニーからエスペランスまでは480km。よほど興趣に富むスポットがなければ、コースを延ばすことはしないであろう。
 先に結論を言ってしまうと、エスペランスこそ、この旅のハイライトになった。
 今回のドライブ旅行では一日の日程の中にかならず立ち寄るところがあったが、アルバニー、エスペランス間はガソリンスタンドを除き見るべきものが何一つなくノンストップドライブであった。前半のハンドル担当である私は平均時速140kmでぶっとばす。
右も左も牧場があるだけ。とてつもない規模の牧場が広がる。時折羊の群れが見えるがそれも小さな点の集合にすぎない。とにかく、道路が真っ直ぐに伸びている。北海道には日本で一番長い直線道路があり、私もドライブしたことがあるが、こことは比較にならない。
 私は運転しながら距離計で計測してみた。10km毎にほんの少し曲げてあってまた10km真っ直ぐというように道路がつくられている。私は計測を繰り返しながら運転をしている。さもないと退屈してしまうからだ。後半のドライバーは田仲氏。前半飛ばしたので予定より早くエスペランスに入れそうだ。
 右手を見ていた私の視野に突然ピンク色が飛び込んできた。「ピンクレイク!!」と思わず叫んだ。本当にピンクレイクがあるとは思わなかった。いろいろな人から「あれは名前だけだよ」と聞いていたからだ。車を右折させレイクへと向かう。
 ピンクと言うより、もう少し紫がかった美しい湖が目の前に広がってきた。だれもが感嘆の声を上げた。本当にきれい!!
車から降りた私はどんどん水際に降りていった。水が引いた土手の部分は一面真っ白に広がっている。手ですくってみると約2、3ミリの厚さで塩が手の上を覆っている。その塩を集めて手のひらいっぱいほど持ち帰った。
 このピンクレイクの塩分は98%で、その塩分が太陽光線の具合でピンクに見えるらしい。だから夏の季節でないと美しいピンクレイクは見られないようだ。
こんなに美しいピンクレイクにも観光客は来ていない。観光バスも何もない。私たちは貸し切りでこの素晴らしい景色を独占しているのである。それにしても湖がピンクに見えるのはやはり不思議な思いがする。なんとも神秘的だ。家内などは、思わず少女のようにキャアキャアとうわずった声を発していた。
 ピンクレイクを後にし、海沿いを町に向かう。予想外のもうけものの景色に出会った。観光案内にも書かれていない景色だ。日本には何々ラインと呼ばれる有料道路が数多くある。「やまなみ」「レインボー」など素晴らしい名前に内容が伴わないことが多い。
 今、ピンクレイクからエスぺランドの町に至るこの海岸沿いの道を走っていて、名も知られていない道が、ものすごく素晴らしいと感じた。もちろん、無料道路である。