中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

2850km、感動のドライブ旅行(その5)

JPオーストラリア誌 1994年 7月号
2850km、感動のドライブ旅行(その5)
 
 デンマークは、家内が「早く連れて行って」と以前から懇願していた所でもあり、車が町に近くなるにつれ、何となくワクワク期待するものがあった。
思ったよりも小さな町だった。小高い丘を背負って海に向かってなだらかな傾斜があり、家族的な避暑地の雰囲気を漂わせている。とりたててびっくりするようなものは何もない。しかし小さな川が海に注ぐ辺りに忘れられない風景があった。たくさんの家族がその川で泳いでいた。格好のいい岩が川の中で自然の大きなプールをいくつも造り、清流がたっぷり流れていた。
子供達は、安心して泳ぎ戯れている。その風景を見ながら、「いいなー、こんなところで孫を遊ばせてやりたいなー」と田仲さんと私がつぶやく。
本当は、孫ではなく、私自身が少年の頃にこんな素晴らしい体験をしたかった。
オーストラリアでは、泳ぐ場所に不自由はしない。しかし子供連れで水遊びをするのに、これほど情緒たっぷりの場所も少なかろう。
 町の中心に、この町では有名なワイナリーがある。ここでは工芸品の展示や即売もされている。その中にどこかの工芸展で最優秀賞を得た木の器があった。直径40センチほどの果物皿と言えばいいのだろうか。その薄いつくり、木目の美しさが忘れられない。やはりユーカリの木の一種なのだろうが、網目模様の素晴らしい木目をなめらかな曲線に仕上げたこの器をどうして買い求めなかったのか、今になって悔しい思いがしている。
 デンマークには、泊まる予定がなかったので僅かの時間滞在しただけだったが、次の機会にはゆっくりしてみたい所だ。
 車は一路アルバニーへと向かう。今日の宿泊場所でもある。アルバニーはパースから真っ直ぐ行けば約400キロ、車で3時間少々であり、アルバニーに別荘を持っている人も多い。パースよりも少々涼しいので避暑という目的と都会からの脱出という目的もあるようだ。
 街は比較的大きいが、市ではなく町らしい。街のセンター通りには落ち着いた建物が立ち並んでいて、穏やかに道を下っていくとそのまま海につっこんでしまいそうな感じになっている。
不平を言うなら、この海に突っ込んでしまいそうな場所に、何か洒落たものが欲しい。せっかくの素晴らしいロケーションがほったらかされている感じで勿体ない。アルバニーにはエスペランスからの帰路にもう一度立ち寄ったけれど慌しい日程の中で多くを見ることが出来なかった。Natural Bridge & The Cap や Blow Hole など自然の凄さを思い知らせれると宣伝されている観光名所は、残念ながら次回に譲ることにした。
 ここでの滞在中、私が最も興味を持ったのは、海沿いのホテルでの外での結婚式だった。ホテルの前に公園があり、その公園のパティオの周りに5、60人の人々が群れているので、何事かと近づいてみると結婚式の最中だった。スコットランドの楽器を奏でるなか厳かに式が行われていた。強風の吹く中、新婦の長いお話も一同じっと耳を傾けていた。最近の日本の芸能人ばりの結婚式と比べてなんと心温まる結婚式だろうか。