中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

「オナラ残酷ものがたり」(4)

AJ・NEWS新聞 2010年4月号
「オナラ残酷ものがたり」(その4)
 
  一般にオナラがよく出る原因は食べ過ぎによるものだと思う。そういえば私もよく食べるし、早食いでもある。しかし、同じような量を同じようなスピードで食べる家内の場合はオナラ問題で苦しんでいない。食べる量とスピードだけがオナラ多発の原因にはならないのではないかと言いたいのだ。
 環境が変わると体調が変わるということはよくあることだが、我がオナラ問題は一向に関係ないらしい。2005年に14年間のパース生活を終えて帰国した後も、同じ悩みを抱えているからだ。
 我が家は神戸の六甲山の中腹にある。日本三大夜景という言葉をご存じだろうか。長崎、函館と並び称される。しかし、身びいきではないが、長崎や函館とはその光の量が違う。六甲山頂上から観(み)る夜景は一千万ドルと称されているが、我が家からの夜景は700万ドルぐらいの価値はあるだろうと自賛している。海抜300メートルにある我が家からは、神戸市内、芦屋市、西宮市、尼崎市大阪市堺市岸和田市という順に、大阪湾沿岸都市すべてを見渡せる。人口の多い地域だけに光が溢(あふ)れんばかりなのだ。
 住宅地としては最も高いところに位置し、六甲ケーブル下駅よりもまだ高いところにあり、通り抜ける車もなく静寂な高級住宅街に建つマンションの小さな一室だ。この地域には外車が多い。メルセデスベンツ、ポルシェを競うように持っている。よほど悪いことをしている人が多いのかと思ったほどだ。私と同じガレージを使っている相方はポルシェを3台も持っている。あとで分かったことだがお医者様らしく、この地域は社長か医者が多いと聞く。日本の医者はやはり稼ぎが良いらしい。
わが家は、バス停までは歩いて6分程度だ。3分から5分間隔という超過密ダイヤで走っているのは、途中に神戸大学があり、六甲登山ケーブル駅があるからでもある。
 周囲には緑が多く、鳥のさえずりを楽しめる。こう書くと良いことばかりのようだが反面不便なこともある。何しろ斜面が厳しい。神戸は坂の街であり「坂がしんどいなんて言っていては、神戸には住めないよ」と言われるが、なんせ、ここは神戸の平均値をはるかに超えた急坂地帯なのだ。
散歩に出る。坂をどんどん下っていく。15分も歩いてから我が家の方を見上げれば「あそこまで歩いて帰るの」と気が重くなるほど高いところに我が住宅街が見えるという感じなのだ。日本人は夫婦で手をつないで歩くということをあまりしない。上りの急坂がしんどいと言う家内の手を引いて歩いていると、障害を持つ妻を私がサポートしているように見えるらしく、何度も振り反って見られる。
急坂を登り続け、我が家の近くのある家の前あたりにさしかかると、いつも同じように強烈なオナラが爆発する。すると、家内はパッと手を離し、私ではありませんよというように離れてゆく。近くに誰もいないのに。でも、爆発音は家の中まで届いているのかもしれないな。