中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

抗がん剤の是非について

文藝春秋1月号に、近藤誠氏の「抗がん剤は効かない」が掲載され大きな話題を呼んだ。
続いて2月号には「抗がん剤は効かないのか・患者代表、立花隆氏 近藤誠氏に質す」という
記事が載る。
ますます盛り上がったところで、週間文春1月20日号に、有力医師たちからの近藤誠氏への
反論が掲載され、次いで27日号で、近藤誠氏の「それでも抗がん剤は効かない」が掲載された。
これらを読んだ読者の中のがん患者の多くは、自分の治療方針に戸惑い、悩み、苦しんだことだろう。
そして、多くの医師たちが一様に「近藤氏は言い過ぎだ」という。その反面「彼の言いたいことも分かる」
とも言う。
治療の現場にある医師たちは、近藤氏の言うことを100%受け入れたのでは、がん患者に対して
治療が出来ないし、患者からのう突き上げも恐ろしい。近藤氏の説は、医師たちにとってはた迷惑
そのものに違いない。
問題は、患者である側がどう考えて、今後の治療に臨むかである。
しかし、ここからが難しい。
抗がん剤の副作用の怖さ。QOL低下の恐ろしさ。寿命が短くなるかもしれないと思いながらも、
何の治療もしないでいることの、耐えがたい孤独感と恐怖がある。
だから、多くのがん患者は、迷いながらも抗がん剤治療を受け入れる。
医師の側からはどうだろうか。
効かないかもしれないと思っていても、患者に対して「もう治療法はありません」と言うことで
患者が路頭に迷うことを怖れる心理が働く。
また、抗がん剤が効いていると思っている医師も多い。
一言でいうならば、医師の多くは、自分の治療法のデーターが欲しい。
どんな抗がん剤を、どのように、どんな患者に使った場合に、どうなったかを知りたい。
そのデーターを積み上げたいと考えるのが普通だろう。そのようなデーターに基づいて
今後の患者への治療に役立てていきたいと思っているだろう。
しかし、患者にとっては、その様なデーター集めに使ってほしくない。命はたった一つしかないのだから。
患者は、医師に「他に治療法はありませんか」とか、「もっといい抗がん剤はありませんか」とか
聞く。そこで医師たちは「こんなのがあるが・・」と勧めることになっていく。
もともとは、患者が望んで抗がん剤を受けている場合の方が多いのだ。
自分のがんを治りたい、治したいと言う気持ちが積極治療を望んでしまう結果となる。
近藤誠氏は、周囲が言うように言い回しが下手で、誤解を招きやすいという点では同感だ。
しかし,氏が言っている「あなたの癌はがんもどき」説には、私は大賛成である。
いい方が下手のなので誤解されている向きがあるが、「がん」と診断されたものの中に、多くの
「がんもどき」が含まれていることは確かなのだ。
そのような「がんもどき」患者が、サプリメントや、食養生でがんが治ったと大声でいう。そして、
がん患者を食い物にする怪しい商法が横行するのだ。
近藤氏の言うように、本物の癌は容易に治らないが、がんもどきは治ると言うよりは恐れるに
足りない。それを知らない患者は、自分の癌をすべて本もととして怖れるところに、悪徳商法
付けいる隙があると言うものだ。
だから近藤氏の説は、がんと言われた多くの人たちに「あなたの癌は、本物かどうか分からない
から、怖れないで良いよ」と言っているのだと理解すればいい。
性質の悪いがんは、何をしても命を奪っていく。苦しい抗がん剤を受けるかどうかは、患者本人が
選択することだが、もっと命や、生きている時間を大切に考えるなら、受けないで良い抗がん剤
治療もあると思う。
少なくとも、70歳を過ぎた高齢者や、若くても著しい体力の低下がみられる場合など、がんの
再発後などは、抗がん剤治療を受けない方がよい。
抗がん剤を受ける場合は、病院に入院したまま帰らぬ人となる覚悟がなければならないのでは
ないだろうか。
とは言うものの、その時、その立場にならなければ、分からないのが人間の弱さでもある。
多くの知り合いが、抗がん剤治療を受けた後、急激に悪化しているのを見て来ているだけに、
やはり抗がん剤の「悪」の方が私の印象には強く残っている。
延命効果と医師は言うけれど、それは医師の立場からの考え方ではないだろうか。
その人の残された時間と、やらねばならぬ事柄などを考えた時、入院したまま帰らぬ人となる
ことは、本人にとっても残念な人生に違いない。
大病院は、死の間際になってから、在宅医などへ患者を回すと言う。病院で死なせたくないからか、
鉄手続きが面倒だからなのか。
そして、死の直前まで抗がん剤を打ち続ける病院も少ないないと言う。
世界に類を見ない、抗がん剤消費国であることを肝に銘じておくべきである。
患者が「抗がん剤信仰」をやめなければ、日本の癌治療は、恐ろしい方向に行くだろうと
私は考えている。
抗がん剤で、だれが得をするのか。
患者か、医師か、病院か、製薬会社か。
はっきり言う。抗がん剤使用は、患者だけが得をするのでなければならないはずなのだ。
がん細胞と、正常細胞はどちらも自分の身体である。他からやってきた病気ではない。
それだけに、抗がん剤は、正常な細胞まで同じようにやっつけてしまうものなのだと言うことを、
もっと知ってほしい。