中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

随筆自伝(140)私を守ってくれたのはだれなのか

     《旅のハイライト、エスペランス

 アルバニーからエスペランスまで約480キロ。今回の旅を計画する時、こんなに遠いエスペランスまで足を延ばす価値があるのかどうか一瞬迷った。

誰もがそう思うらしく、アルバニーまで行く人は多いのにエスペランスまで足を延ばす人は少ない。足を延ばすとはよく言ったもので、アルバニーからエスペランスまで、よほど興趣に富む観光スポットがなければ、コースを延ばすことはしないであろう。

 先に結論を言ってしまうと、エスペランスこそ、この旅のハイライトだった。

 今回のドライブ旅行は一日の日程に必ず立ち寄るところがあったが、アルバニー、エスペランス間は、ただ1カ所のガソリンスタンドを除き道路の左右にほかの建物もなく、エンペランスまでノンストップドライブであった。

前半のハンドル担当である私は平均時速140キロでぶっ飛ばす。だが用心しないと警察ヘリコプターからスピード違反を見つけることができると聞いた。本当かな? 対向する警察車もスピード違反を検測できると聞く。嘘(うそ)かまことか分からないが、気を付けながら運転する。

右も左も牧場があるだけ。とてつもない規模の牧場が広がっているだけ。時折羊の群れが見えるが、それも小さな点の集合にすぎない。

とにかく、道路が真っすぐに伸びている。北海道には日本で一番長い直線道路があり、私もドライブしたことがあるが、こことは比較にならない。

 私は運転しながら距離計で計測してみた。約10キロごとにほんの少し道路を意識的に曲げてある。次いでまた10キロ真っすぐというように道路がつくられている。直線だけだと運転に油断が起こるから変化をつけているのだろうとおもう。

私は計測を繰り返しながら運転をしていた。さもないと退屈してしまうからだ。後半のドライバーは田仲氏。前半飛ばしたので予定より早くエスペランスに入れそうだ。

《ピンクレイクの素晴らしさ》

 右手を見ていた私の視野に突然ピンク色が飛び込んできた。「ピンクレイク!!」と思わず叫んだ。本当にピンクレイクがあるとは思わなかった。いろいろな人が「あれは名前だけだよ、ピンクじゃなかった」と言っている人がいたからだ。車を右折させレイクへと向かう。

 桜色のピンクと言うより、もう少し紫がかった美しい湖が目の前に広がってきた。誰もが感嘆の声を上げた。本当にきれい!! 

 ピンクレイクの水は真夏時には塩分濃度が98%になるそうだ。そのために太陽光線の反射具合でピンクに見えるらしい。だから真夏で、しかも雨の少ない年でないと美しいピンクレイクは見られないようだ。酷暑のために(そのうえ雨が少ない)水分が蒸発して湖面が低くなっている。

私は水際に下りていった。水面は一面ピンク色に染まっている。湖の水面が低くなった「のり面」全体が白くなっている。手ですくってみると約2、3ミリの厚さに塩がのり面全体を覆っているらしい。その塩を集めてごく小さな瓶の1杯分ほど持ち帰った。あとで分かったことだが、この塩のおいしいことこの上ない。もっとたくさん集めて持って帰ればよかったのにと後悔した。

 これほど美しいピンクレイクにも観光客は来ていない。観光バスも何もない。私たち四人は貸し切りでこの素晴らしい景色を独占しているのである。

それにしても湖がピンクに見えるのはやはり不思議な思いがする。なんとも神秘的だ。家内などは、思わず少女のようにキャアキャアとうわずった声を発していた。こんな素晴らしい景色を我々4人だけで独占しているのも不思議な感じだ。日本なら観光バスが何十台も来ているだろうに。

 ピンクレイクを後にし、海沿いを町に向かう。予想外の素敵な景色に出合った。観光案内にも書かれていない景色だ。日本には何々ラインと呼ばれる有料道路が数多くある。「やまなみ」「レインボー」など素晴らしいなど、名前に内容が伴わないことが多い。エスペランスのピンクレイクから町に至るこの海岸沿いの道路を走っていて、そのどれにも増して素晴らしいと感じた。もちろん、無料道路である。