毎日新聞朝刊の連載小説の中に、過去のある人についての
人生物語を語り合う場面が書かれている。人は意外にも身近な
人の過去のことを知らないし、正確に知ろうともしないのが
普通らしい。 私の生きてきた道筋を娘たちも正確には
知らないだろうし、知らなくても責められることではない。
沢山いる従姉弟のなかで特に親しくしてきた二人がいる。
20歳以上も歳が離れているので彼女たちの子供の頃からの深い
付き合いでもある。 最近になって姉のほうが私の過去のことに
関心を持ってくれて、いろいろと質問するようになった。
私も丁寧に間違いのないように話す。 深夜の電話は2時間にも
3時間にも及ぶ。今までにも話してきたことだが、これまでは、
いい加減に適当に聞いていたことも、最近はしっかり聞いて
くれるようになった。
現在の私は激痛を抱える老人であり余命も短い。そういう私は、
この従妹の丁寧な聞き取りに深く感謝している。 自分を語りたく
ない人もいるだろうが、私はすべてを語っておきたいタイプなのだ。
2時間も3時間も、しっかり聞いてくれることで激痛を忘れさせて
くれる。相手を癒すには「聞いてあげる」こともとても大事なこと
だったのだと気付かせてくれる。慰めの言葉を発するよりも、相手の
話を聞いてあげることのほうが癒し効果があるのではないだろうか。
新聞の連載小説のように・・この従妹がいつの日か、誰かに私の
ことを物語として伝えてくれるかもしれない。