中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

イスラエル/パレスチナ問題とフランス誌へのテロ事件

◆  フランスの週刊雑誌社へのテロ事件について私見を書くつもりでいたが、
  腰痛が厳しくてパソコンに長い時間向かっておられないので、約20年前
  ほど前に、JA・NEWS紙に書いた「世界を考える」という連載の中で
  イスラエル/パレスチナ問題を3か月の亘って書いたものが保存されているので、
  それを掲載しておきます。この問題を知っていれば、これから起こるであろう
  ヨーロッパやイスラム諸国での問題を読み解くのに役立つでしょうから。 
  今後、その3か月分を順次掲載しますので。まずはそれを読んでおいてください。
  今回のテロ事件もすべてつながる内容だからです。 
  全ての根っこは同じだからです。
 
イスラエルパレスチナ問題その1  JAニュース紙連載記事

 アメリカのブッシュ大統領が、またまた問題発言をした。731日の記者会見で「イスラム教はインチキ宗教である」と言ってしまったのである。周囲が慌てて「イスラム教をかたる輩のことを言ったのだ」と弁明はしたが、なんともお粗末な無教養な発言だろうか。この発言はブッシュの本音であろうが、後々まで引きずるに違いない。
 イスラエルパレスチナ問題がわからなければ世界は見えない
  毎月この原稿を書き上げてから新聞が出るまでに二週間以上もある。現在のように世の中の動きが速いと、原稿に書いたものが古く感じられるのではないかと案じられるほどである。アメリカのイラク攻撃がいつ起こっても不思議ではないと先月予告した。そして、それを見極めるためには、イスラエルパレスチナ問題の今後の経緯が多いに関係あるとも書いた。
 現在世界に起こっている多くのさまざまな紛争のなかでも、イスラエルパレスチナ問題ほど根が深く複雑なものはないだろう。また、この問題が世界をより複雑にしているとも言えるだけに、世界、もっといえば地球にとって最も大事な問題だとも言える。それなのに、ああ、それなのに、イスラエルがどこにあるのかも知らない人たちの多いことよ。
  白い世界地図を見てイスラエルがどこにあるのかを正確に書き入れることのできる人は世間に何パーセントいるだろうか?全世界を揺るがせている元凶地域だと言うのに、である。これから、数ヶ月間、この問題をあぶり出してみようと思うので、なるべくならば世界地図を見ていただきたい。
この問題の説明には3年間の連載でも書ききれない長い歴史と、多くの人たちが考えている以上の問題が含まれている。これから数ヶ月間で、どこまで読者の方たちにわかり易く書くことができるか心もとないが、どうか読みつづけていただきたい。特に若い人たちよ、ぜひこの問題に関心を持っていただきたい。世界を知るには最も大切なキーがここに隠されているからである。
表面上は宗教がらみ・・しかし・・実は・・
  この問題の性質上、ユダヤ教キリスト教イスラム教にも触れる。しかし、私自身はこれらどの宗教にも組しない立場で公平に書くつもりである。また、ある宗教に触れる場合も、その宗教を批判しているのではない。どの宗教も批判はしない。しかし、宗教を利用するものを批判することがあるのでご理解いただきたい。これらは本質的に違うものなのである。この問題は宗教がらみに見えて実はもっと凄い世界戦略が隠されている。
イスラエルパレスチナ問題とは何か?
 複雑な問題をなるべく簡単に整理しよう。まず、イスラエルと言う国家と、今は国を持っていないパレスチナとの対立ではあるが、イスラエルと表現すると問題の核心が呆けてしまう。イスラエルの中には、パレスチナ人が住んでいるからである。理解をしやすいようにイスラエルと言わず「ユダヤ」とした方が問題点をはっきりさせられるだろう。
ユダヤ教キリスト教イスラム教 俗にユダヤ人と言われる人たちにもいろんな解釈があるので後で触れる。また、民族ではなくユダヤ教を信じている人をユダヤ人というという解釈もある。
 ユダヤ教キリスト教イスラム教は兄弟宗教である。ユダヤ教旧約聖書に予言され、救い主として誕生したのがキリストだと言うのがキリスト教であり、新約聖書の世界である。キリスト教ユダヤ教の改革宗教という位置付けである。ユダヤ教から見れば、勝手にユダヤ教を否定した新興宗教と感じるだろう。イスラム教は、旧約聖書ユダヤ教の予言も、新約聖書のキリストも認めた上で、この二つの宗教の不完全なところを補った「完全宗教」を主張している。そして此の世に現れた最後の預言者が「ムハンマド」だと信じているのがイスラム教だ。言い換えるならば最新バージョンアップ版がイスラム教だと主張しているわけだ。同じ場所で生まれた兄弟宗教であるだけに、三者の憎しみ合いも根が深く、歴史上ではお互いに残虐の限りをつくしてきた。これらの歴史は来年頃に書くことになるだろう。
 誰がいつ頃から住んでいたのか 
 約3300年前頃、この地には現在パレスチナ人と言われる人たちが住んでいた。パレスチナとは、聖書などにも書かれているように「ペリシテ人の住む土地」と言う意味である。現在のイスラエル、ヨルダン、ヨルダン西岸、ガサ地区を合わせた地域全体を指す言葉である。
 ユダヤ人の離散
3000年前、ユダヤ古代イスラエル王国ダビデ王がこの丘を聖地とした。その後いったん古代イスラエル王国は二つに分裂し滅亡した。その後、ギリシャローマ帝国に支配されたものの紀元前100ローマ帝国からこの地域の国王に任命されたユダヤヘロデ王ギリシャ/ローマ風の神殿を建て、ユダヤ人をローマ帝国に従わせようとしたが、その支配に反発する反乱が何度も起きたために多くのユダヤ人たちはエルサレムから追放されたり奴隷として売られ国を持たない離散状態となったのである。
  紀元3世紀には、ローマ帝国の国教がキリスト教になったことから、キリストを裏切り、磔の刑にした張本人「ユダ」の系譜としてユダヤ人は世界のキリスト教徒から嫌われる運命を持ったようである。
聖都エルサレムの丘には三つの宗教の聖地
現在、この丘には三つの宗教の聖地が重なり合って存在する。テレビなどで時折放送されるが、予備知識がないと理解しにくいかもしれない。極く狭い地域に三つの宗教の聖地が重なり合うことの不思議さと、それを巡る血で血を洗う抗争は傍目からは馬鹿げて見えるだけである。
 ユダヤ人の定義
 これは大変難しい。民族に関係なくユダヤ教を信じている人がユダヤ人という解釈もある。また、ユダヤ教徒の中にもアシュケナジースファラディの二つに分けられる場合もある。前者が約30%、後者が約40%を占めると言われる。アシュケナジーはほとんど都市部に住み、政治家、医師マスコミなど知識階級が多く、スファラディは砂漠などに住み労働者が多い。アシュケナジーユダヤ教の厳しい戒律をそれほど守らないのに対し、スファラディは厳しい戒律が生活の基盤になっている。
 中世にはユダヤ人追放令が出たために離散がひどくなったのだが、ユダヤ教から生まれたキリスト教とあって、キリスト教徒によるユダヤ教の人々への弾圧はすさまじいものがあった。その中にあって、自分たちの身の安全を守るためにユダヤ教の厳しい戒律を守らず、キリスト教的な生活をする、いわゆる隠れユダヤ教になった人たちが「アシュケナジー」である。
 その一方、イスラム教は兄弟教のユダヤ教キリスト教も認め敬意さえ持っていたようだ。イスラム世界で住んでいたユダヤ人たちは弾圧されることなくユダヤ教の戒律を守った生活を続けることが出来たために、現在に至るまでユダヤ教の戒律や生活習慣を守りつづけることが出来たのである。この人たちを「スファラディ」という。
パレスチナ人とは??
 先ほども書いたように、ユダヤ人より古くからこの地に住み、ユダヤ人が世界に離散した後の2000年の間はパレスチナ人の住む国だったのである。イスラムが勃興し、この地帯は巨大オスマン・トルコの支配地になる。
 第1次世界大戦
 第1次世界大戦でトルコが英国に敗れ、1922年この地は英国の委託統治領となったことから、現在の混迷を迎えることになった。
 その一方で、19世紀末から、それまで世界に離散していたユダヤ人の間で「シオニズム(故国復帰運動)が高まって、世界各国からユダヤ人たちのパレスチナへの移住が始まっていた。パレスチナの人々もユダヤ人たちを快く受け入れた。トルコ、英国という外国支配の中で、パレスチナ人もユダヤ人たちも一見仲良く暮していた。しかし、3千年以上もの間、親代々の土地に住むパレスチナ人は「土地」に対する執着心がなく、一方世界に離散していたユダヤ人たちは強烈な「土地願望」があり、パレスチナ人たちから土地を買い取って、これを次第に「領土」とし始めたために対立が始まってゆく。
 どうして「イスラエル」国家が出来たのか?
 この問題の中に真実は隠されている。ある日突然のようにパレスチナ人が、住んでいる場所を追われ、国を失った。どうしてこんなことが起こったのだろうか?
 地図を見るとよく分かるが、イスラエルの周辺は、トルコ、イラク、エジプト、ヨルダン、サウジアラビア、イラン、クエート、レバノン、・・・どこもかしこも周囲全部がイスラム国家である。そのイスラム圏のど真中に突如として現れた「イスラエル」が今世界の発火点となっているのである。
 イスラエル国家成立とキリスト教諸国の企み
 詳しく書くスペースがないので大急ぎで書き進める。第2次世界大戦後の1947年、国連はアメリカ主導でパレスチナ分割案を採択した。当時パレスチナ全土の人口は190万人でユダヤ人は3分の1以下の人口だったにもかかわらず、この分割案は全土の6割をユダヤ人側に当てると言うものだった。エジプト、シリア、ヨルダンなどのアラブ諸国は、この案が実施されたら戦争も辞さないと警告したが、ユダヤ側は、1948年5月14日、一方的に「イスラエル国家成立」を宣言した。
 「昔この国は俺達のものだった」という理由で復帰運動を起こした。このシオニズム運動によって、ユダヤ民族は計画的に大挙してパレスチナ移住をしていたのだが、三千年間もこの地に住んでいたパレスチナ人たちはそれに気付くことがなかった。ユダヤ人たちの移住数を書いてみよう。1882年―1925年までの43年間に約15万人。1926-1935年までの9年間に約20万人、1936-45までの9年間に15万人が移住してきている。これらの大挙移住が、やがて国土、国家を奪い取ってしまうことになろうとはパレスチナ人は考えてもいなかったようである。1048年の独立当時は60万人だったイスラエルユダヤ人は独立後1年半後の1950年には100万人を突破している。
 どうしてイスラム諸国の中にユダヤ人の国を作ることが出来たのだろうか。イスラム国家の増大化を恐れたキリスト教諸国がイスラム諸国のど真ん中に「クサビ」として打ち込んだのが「イスラエル」すなわち、ユダヤ人国家である。クサビとしての効果以外にも理由がある。ヨーロッパ各地に分散するユダヤ人達の取り扱いに各国ともに手を焼いていたこともあってユダヤ人たちに「故国」を作ってやればこれらの問題が解決すると考えたからでもある。これは表向きの理由でもあり、正しいのだが本当はもっともっと深い国際戦略が隠されているのでいつかそれを書くことにしよう。
 世界は人脈が絡んで動いている
 歴史を軽視する人たちがいる。過ぎ去ったことだと思っているらしい。そういう部分もある。しかし、何百年と、脈々と人脈が繋がっている事実も真実である。特に今の世界を動かしている人たちのほとんどは「過去と繋がった」人たちなのだ。それを知るには、」広瀬隆著の「赤い楯」()()集英社「私物国家」=光文社「予言された21世紀」集英社 /パンドラの箱の悪魔」NHK出版/「地球の落とし穴」NHK出版/「世界石油戦争」NHK出版などが詳しい。これらの本には人脈が詳しく書かれていて説得力がある。丁寧に読み進まないと理解が難しいかもしれない。