中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

随筆自伝(131)私を守ってくれたのはだれなのか

《パース全体のレストランのイメージ>

 

 全体の面積が広く、人口密度が低いこともあり、レストランの数は日本などと較べると少ない。

14年間、あちこちのレストランに行ったが、西欧料理のレストランで満足できる店はなかったというか、味が合わなかったというべきだろう。

 雰囲気を含めて、わたしたちの生涯で二度といけないだろうと思うようなレストランがあった。過去形なのは、現在はないという情報をもらったからだ。

 二千年にオーストラリアでオリンピックが開催された。その際に、シドニーメルボルンなどにカジノが作られたのだが、それまではパースのカジノが南半球最大のカジノを誇っていた。

 多くの手慣れたデイーラーたちが、シドニーメルボルンのカジノに引き抜かれて、パースのカジノはデイーラーの必要なテーブルを減らさざるを得なかったほどだった。

 カジノだけではなくゴルフ場、ホテル、劇場なども備えた娯楽施設だが、現在はゴルフ場をなくして、より多くの娯楽を楽しめるように驚くほどに拡大されているようだ。

 施設内に 「ジェンテイング・パレス」という中華レストランがあった。かなりの大きさであり、周囲の窓から美しい外観が味わえるという店でもあった。

 日曜日の飲茶(やむちゃ)も、広々とした中で、多くの種類を味わえるというのもよかった。リッチな気分でゆったりと飲茶を食べるとか、高級なものを食べているような気分にもなれる。

 この店の「スティ―ムボード」という鍋物が素晴らしかった。贅沢な食材が盛られていて、いつも満足だった。 中華のセット料理もよく、他ではなかなか味わえない北京ダックの本物が出てくる。

わざわざ本物と書いたのには訳がある。 北京ダックとメニューに表示されていても、皮と身がくっついたものが多いのだが、この店で出てくるのは本格的な北京ダックで美味しいのだ。

 生涯を通じて、もう一度行ってみたいレストランというのは、この店以外にはない。もちろん、わたしの経験が浅いのかもしれないし、高級レストランで食べた回数が少ないからかもと思う。

 しかし、高過ぎる料金を払って美味しいものにありつけるのは当然のことであり、そういう場合は美味いという感激は、あまり起こらない。

 この「ジェンテイング・パレス」というとても素敵なレストランはいまはないと聞いている。

     《日本の雑誌のいい加減さにあきれる》

  パースで、豪州で最もおいしいフランス・レストランと、日本の女性雑誌に何度も紹介された店がある。「ルーズ・ボックス」という店名で、かなり郊外だった。 友人たちと五人でわざわざ遠くまで出かけたのだった。 木造作りで西部劇に出てきそうな感じの店だ。 期待したほうがいけないのかどうか、料理はお世辞にもうまかったとは言えない。

 最後にケーキをそれぞれ別のものを注文し、それに最後の期待を賭けたが、どれもこれも不味くて、五人が思わず吹き出してしまったほどの期待外れだった。 

どうして日本の婦人雑誌になんども出ていたのかが問題だ。わたしが想像するには、たぶん孫引き掲載だと思う。 よくやる手口で、現地取材せずに、他社の記事を孫引きで使用したのだと思う。 なんども、いろんな雑誌に出るのだから、それらを読んだ人は、信じ込んでしまうのだろう。

一緒にレストランに行った友人の奥さんが、なんども読んだといっていたが、わざわざ遠いところまで時間をかけて食べに行き、不味いものを食べさせられて、馬鹿みたいだねと笑いあうしかなかった。

     《スワンリバー沿いのしゃれた店》

スワンリバー沿いの素敵なレストランがあった。 その名は「ミューズ」いつも大きなペリカンがマスとのようなものにとまっているので飾りかなと思っていたが、本物のペリカンが同じポーズで止まっていて、時おり大きく羽ばたく。 レストランには、川からも来られるように二つの桟橋がある。

 あるひ、大きなヨットが二隻停泊していて「売り物」と表示されていて、客が集まっていた。私たちも乗船して見学した。 階段を降りるとキッチンルームがあり、隣室には大きなダブルベッドを備えた寝室とシャワー室がある。

 階段を上ったとき、セールスの人が大きな声で叫んでいた。

『いま、この日本人のご夫妻が、このヨットを買うとお決めになりました」と叫んだ。

 周囲に集まっていた人たちから、拍手喝さいされて気恥ずかしい思いをしたが、わたしは手をあげてそれにこたえた。

 このレストランは、生カキをその場で取り出して供するので人気だった。 神戸から来た友人夫妻をつれていったことがある。 彼は、この店のカプチーノに感激し

『なんと美しいカプチーノなのだ』

 という。神戸大丸の一階には有名なカプチーノの店がある。飾り付けが美しいので評判の店でもある。 彼は以前に神戸大丸の宣伝部長だった人なのだがこの店の出汁方から素晴らしいとひとめぼれのようだった。

「ミューズ」で供されたカプチーノには装飾はなかったが、おおきくふっくらとした盛り付けが美しかった。 カプチーノでも、人を感激させることが出来るのだとおもった。

 この店の場合、まずロケーションがいい。日本にはロケーションに恵まれる店は少ないのではないかと思えるが、それは仕方がない。