私には登山の経験がない。だから人生を登山とたとえる資格が
ないのかもしれないが、これまで何度も若者に登山に例えて教えて
来たこともあり、この際もう一度考え直したい。
私が若者たちに、人生を登山とたとえたのは、登山中、道に迷った
場合を想定してのことだけである。
道に迷ったとき、険しいのぼりの道と、楽な下りの道がある場合に
どちらを選ぶべきだろうかという設定だった。
下る道は楽だが、やがて木が生い茂り周辺を見渡せなくなり、沢に
おりて、自分の居場所まで見失うことがある。
険しいようだが峰伝いに登れば、視野が開け自分の立ち位置が分り
その後の行動に希望が持てるようになると。
ただそれだけのことを登山に例えただけである。
しかし、いま改めて考えてみると人生と登山には似ている部分も多いの
ではないだろうか。
目の前には次々と、谷あり崖あり岩場ありと危険な場所が立ちはだかる。
それらを一つ一つクリアしながら前に進むしかない。
頂上にたどり着いたかといって安心はできない。下山という困難が待っている。
三浦雄一郎さんはすごい人で3度も世界最高峰のエベレストを登った。
だが最後の3回目は、途中からヘリコプターで下山しており、完全な登頂と
言えるのかどうか・・。
私たちの人生のぼりは比較的優しいが下りが難しい。
下り方を一歩間違えば暗闇に入ることもある。
どこをどう下るのか、一人一人に課せられたテーマでもある。