藤浪という選手ほど話題の多い人も少ない。高校生のころから
注目される選手だった。
阪神タイガースに1位指名され、入団した年から快進撃をした。
その彼が、なぜか突然ンノ-コントロール投手となった。
金田さんが阪神の監督に就任した年、キャンプが始まってから
記者団の前でこんなことを言った。「僕は走るのが嫌いでね、
あまりランニングなどしないのです」と。
当時、イチローさんが毎朝、家の近く、ホテルの近くでランニングを
日課としていることが注目されていた頃の藤浪選手の発言だった。
投手は、とくに下半身を鍛えることが重要だと思っていた私は、
そのニュース映像をみて「こりゃ、あかんわ」と思ったものだった。
その後の彼のことはみなさんがご存じの通り、パッとしなかった。
それでも、おおくのフアンは彼が持っている潜在能力に期待し続けた。
彼がメジャーに行きたいと言い出した時、多くの人が首をかしげた。
近年に実績がない選手を拾ってくれる球団などないだろうと言っていた。
ところが、資金力のない球団のアスレチックスが彼を受け入れてくれた。
ここから、(彼を育てられなかった阪神のコーチが悪かったのかどうかを試される)というコメントが多くなっていった。
アスレチックスで先発として出場するも4試合に先発登板して0勝4敗、防御率14.40というさんざんな結果だった。大低迷するチームの中で、これではフアンもメディアも怒り心頭で球団の経営能力にまで不満をつのらせる結果を招いた。
球場に来るフアンの数は急激に減り、ただでさえ経営困難になって
いた球団は、本拠地を数年後にラスベガスに移転することを決めて発表した。
以前から球団移転は考えられていたのだろうが、ちょうど藤浪登用への
不満がきっかけとなったようなタイミングではあった。
藤浪は、その後は中継ぎとして使われたがノーコンは治らず失点を
重ねてチームに貢献できなかった。
日本のフアンは(阪神のコーチが悪かったのではなさそうだ)と呟き始めた。
ところだがだ。5月27日以降は21回2/3を投げて防御率3.32とし、7%の
四球率に対して25.6%の奪三振率を記録するという変身を成し遂げたのだ。
コーチ陣が、1イニングを直球だけで勝負しろ、君の直球には威力が
あり、コントロールもあるのだから思い切り投げろ と指示したようだ。
それで藤浪は自信を得たのだろう。その以降に結果が付いてきた。
7月19日にアスレチックスからオリオールズへのトレード移籍が電撃
決定したときは驚いた。ア・リーグで最下位のチームから地区優勝は
まちがいなしとおもわれる勝率1位のチームに招かれたのだから。
アスレチックスは1年契約で今オフにFAとなる藤浪を契約満了前に放出し、その見返りとして成長著しい若手左腕を獲得する方が得策と判断したのだろう。
ア・リーグ東地区は、両リーグを通じて最も激しい戦いの場でもある。
現在ヤンキースが5位、レッドソックスが4位のということからも推し量れる。
オリオールズは首位にいるとはいえ、今後の厳しい戦いの中で首位を
キープできるとは限らない。そこで藤浪に「白羽の矢がたった」のだが、
最初は少々不思議な思いだった。
その答えは直ぐに分かった。藤浪はオリオールズに移籍後、どんどん
使われている。1イニングだけではく、2イニングも投げさせ、ストレートだけではなく、変化球も日を追うごとに球種を増やして投げさせている。
なぜか。オリオールズはノーコン投手の再生工場でもあったのだ。
これまでにも、多くのノーコン投手を蘇らせた実績がある。
藤浪は威力あるボールを持っているから白羽の矢が立ったのだった。
現在、横浜に在籍するバウアー投手はサイヤング賞投手だが、かつてはオリオールズのコーチに再生させてもらった経緯がある。
このままいけばポストシーズン進出は間違いなしで、リーグ優勝シリーズ、ワールドシリーズまで駒を進めるだろう。
そうなれば、藤浪の活躍も見らるかもと思う。
来シーズンは、大型契約も結べるだろう。
やはり原石は上手に磨けば光るのだ。もっと彼が輝くかどうかは、この後ポストシーズンまでの彼の成績しだいで決まるだろうと思う。
運と実力と生かす人がいれば、誰もが輝くチャンスがある。
素質があるのにMLBから去って行った筒香選手の場合は、何がたりないのだろうかと考えている。