中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

抗がん剤と医師

 昨日「抗がん剤はなんのために使うか」を書いた。
そして、全身がんの患者に抗がん剤を使い続ける医師の気持ちが
分らないと批判した。
 そこで、今度は医師の立場に立って考えてみようと思う。
自分の目の前にいるがん患者がどの部位の、どの程度の病期かに
よって、患者にどのように説明するかという思いも違ってくるだろう。
がん患者が入院する病院は、ほとんどの場合は急性期病院である。
急性期というのは慢性期とは違うのは文字通りなのだが、急性期
とは「治る見込み」があるという前提に立っている。
 ところが、目の前のがん患者には、すでにあちこちに転移があり、
手の施しようもない場合もある。
 こういう場合に医師はインフォームドコンセントに困る。
 「あなたは、すでに手の施しようのないがんになっているので、
このままお帰りください」とは言えない。
 がんの病状を詳しく説明しても、がん患者や家族にはうまく理解
できない。医師の説明が終わっても納得もできない。
 だから、「先生、これからどんな治療をしていただけるのでしょか?」
と問うだろう。
 医師は「もう手術もできないですから放射線治療をして、そのあとで
抗がん剤治療をしましょう」と言うかもしれない。
 放射線で治療できる部位であればよいが、できない部位もある。
また、がんの進行が進んでいれば放射線治療も有効でない場合も多い。
 やがて、抗がん剤治療が始まる。1クールで2週間と言うのもあれば、
もっと短い場合もある。抗がん剤治療の1クール目の治療が終わったところで、
「画像ではがんが小さくなっていますね」などと医師は言う。患者や
家族はほっとする。辛い副作用に耐え、その耐えている姿をみてきた
家族も希望を抱く。
 そして、期間を置いて第2クールが始まる。副作用はますます厳しく
なるが、患者も家族も「がんばる」。
 私が言いたいのは、ここからである。いや・・本当は最初から抗がん剤
治療などやってはいけないのだと思う。一歩譲っても、第2クールには
入ってはいけないだろう・・と思う。
 私は、がん治療は何よりも患者のQOL(生活の質)重視でなければ
ならないと考えている。厳しい副作用を耐えるより、ごく普通の生活を
送る時間を患者に与えてやってほしいと思うのだ。
抗がん剤をやらないのであれば退院してください」と言われるから
我慢しているというがん患者がいることを医者は知っているのだろうか。
医師も、辛い立場にいることは重々承知している。それでも、患者の
QOLを最優先に考えてほしいと願いたい。
 韓国ドラマ「ホジュン」をみた方もあろうかと思う。
医師の誰もが、ホジュンのようであってほしいと願うのは、世知辛い
今の世では叶わぬことなのか。