世界を見渡しても日本列島のような国は少ない。国全体が海に囲まれた
細長い島となっていて、山岳部が多く平坦な平野部が少ない。
一年を通じて雨が多く、水に恵まれた国でもある。多くの雨は山岳部に降り、
地面深く浸透し、やがて覆水流となって流れる。
日本全国のほとんどのところでは、深さこそ違うが井戸を掘れば水が得られる。
このような国だから、地下水についての学問も発達しており研究者も多いと
私は考えていた。
うまい日本酒で知られる「灘の酒」は。神戸の灘六郷で作られてきた。江戸時代
して醸し出した「灘の酒」だった。当時は、灘の酒酵母を使っても江戸をはじめとする
関東ではうまい酒は作れなかったものだ。その後、各地の名水に合う酒酵母の発見
によって、各地でも銘酒が作られるようになっている。
日本の気候風土、地形が名水を作り、優れた酒が生まれている。
小さな町村では、地下水だけで町の水道水全部をカバーしているところもあるほど
地下水の恩恵は計り知れない。
ところが福島第1原発では、この地下水が悩みの種となっている。
私がどうしても納得いかないのは、地下水によって放射線汚染水が日々作り出されて
いるということは、事故後にすぐにわかっていたことなのである。それなのに、どうして
根本的な解決策を考えないで2年半も経ってしまったのかということだ。
最近になって、原発施設の山側の地中深く地下水を凍らせてしまう機材を潜らせて
湧き出てくる地下水を食い止めようとする案が生まれているが、これとてそれが実現する
までには2年もかかるという。
毎日、湧き出している地下水によって汚染水が作り出される。タンクを作っても作っても
追いつかない。
海への汚染水漏洩を防ごうと海岸近くに地中がガラス状になる薬品を挿入しバリアとした。
しかし、地下水がそのバリアを乗り越え海へ汚染水が流れ出している。日々流れ出る地下水
がバリアを超えることぐらいは、素人だってわかるはずなのに、「食い止められると思っていたが、
海へ流出してしまいました」などと言っている場合ではない。