タイトルは忘れたが、最近見たドラマの中のセリフだったように
記憶している。
50過ぎの兄が病気持ちの弟に「50を過ぎたら、あちこちが痛くなったり
いろいろあって大変なんだ。お前も俺の歳まで生きたらわかるだろう」と、
励ますシーンだった。
50歳でいろいろあるのはどうかとも思うが、70歳を過ぎれば確実に
いろいろある。女房も70歳までは病気知らずで「肩がこるってどんな感じ?」
という具合で、めったに風邪をひいたこともなかったが、昨年71歳になってから
急に老化が始まった。耳が聞こえなくなる、腕が上がらなくなる、あちこちが
痛くなるという。
私は言う「75歳を過ぎてみろ、もっといろいろあるんだから」と。
人間と言うものは、うまいこと作られている。歳とともにいろいろあって、
こんなに大変な日々だったらいっそ死んだ方がましだ、と思うようになって
自然と死を受け入れられるようになるのだろう。
それでも、人はいつまでも生きたいと思う心情が残っているのだから
欲深い動物ではある。野にいる動物たちの中には死期を悟って仲間から
外れた場所に移って死を迎えるのもいるらしい。その点、人間は病院で死ぬか
自宅で死ぬかなどと迷うからぜいたくなものだ。
昔は、自宅で死ぬのが当たり前だった。いつの間にやら病院で死ぬのが
当たり前になってきている。世の移り変わりと言えばそれでおしまいだが、
自宅で死を迎えないから、死を看とったこともこともない子供が増え、死の実感
が分からなくなっている。
人間は、いつの間にやら動物の仲間ではなくなってきているようだ。
どこかの原発が爆発して、見えない敵に命を奪われるかもしれない恐ろしい
時代に生きているから、いきかたまで無機質になっていくのだろうか。
人間らしい生き方、死にかたを、もう少し子供たちに教えてはどうだろうか。
話がそれてしまった。高齢になると「大変」がたくさん起こるんだよ。でも、
それを知るためには、俺の歳まで(77歳)生きてみろ。これは、励ましの言葉
なのだ。