中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

おいしい 文章の紹介(13)

   高峰高峰秀子著「おいしいお話」の中から、選んで紹介しています。

   山田風太郎編(1)

 文藝春秋秋刊の「B級グルメのこれが美味しい!」という文庫本を見ると、B級グルメとは、いわゆる五大丼と三大ライスのことで、五大丼とは天丼、うな丼、かつ丼、牛丼、親子丼を指し、三大ライスとはカレーライス、チキンライス、ハヤシライスを指すらしい。

 私はこのほかに、麵類とかお惣菜などのなかにも、B級グルメに入るものがあると思うが、要するに高級料亭とか、高級レストランとかでは出さないが、庶民が好んで食べる食物をそう呼んでもいいと思う。

 B級グルメといえば、戦後の闇市の屋台店などを思い出すが、なにが材料だかエタイの知れない食べ物で、これは美食(グルメ)とは呼べないものかもしれない。

 それより、B級グルメと言えば、おもいだすのはソウルの南大門市場だ。

 韓国旅行をしたのは、昭和62年秋のことだが、私の日記に曰くー

「実に驚くべき市場なり。迷路のごとき道の両側にあらゆる食料品ーー魚、干物

野菜、果物、ーそれに豚の頭までが盛り上げられて、ケンカのような売り声が耳を聾するばかり、雑然、紛然、混然、轟然たり。売るものも買うものもまるで乞食の大群のごとし。

 その狭い通路のあちこち、やや広くなった辻に台や椅子を出し、酒飲む人あり、大鍋に煮たるものを食う人あり。燃料はすべて練炭にて、この練炭を走って運ぶ女あり、もし火事を発すればいかなることになるや慄然とせざるを得ず、されど人々みな平然たり。 これぞ人間の生命の大渦、大噴火口と見ゆ」

 私はこの市場のなかの居酒屋で、豚の頭をつついてマッカリを飲みたくなった。旅行の都合がつけばそうしたかも知れない。

 B級グルメの見本のような場所であったが、だいたい私はA級グルメの高級料亭などより、こんな場所のほうがウマいのじゃないかと考えているぐらいだ。