中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

随筆自伝(103)私を守ってくれたのはだれなのか

      《問題のある家庭から、問題を持つ子供が出る》

問題を持つ子どもは、問題の家庭から生まれる、と言われる。 このことは A・S・ニイルも書いているので、どこの国でも、いつの時代にも言えることかも知れない。 問題の家庭というのは、親が離婚したとか、酒ぐせが悪いなどといったことだけを言っているわけではない。子どもの扱いを知らない親。子どもに過剰な期待をかけすぎる親。親が自立できていないという場合もある。

子離れができていない、子どもを信じていない、親の価値観にも、問題があるが親自身はそれに気づいていないといった場合にも、問題の家庭になっていくケースが多いのではないだろうか。

親が未熟でも、子どものほうが親離れをして立派に成長していっている場合には、問題は起こらない。 この場合は、親の子育てがうまかったのではなく、子どもがすばらしかったのだから、子どもに感謝しなくてはいけないケースだろう。

けれども、L・D(子育ての難しいタイプ)の子どもを持った親は、人一倍子育てのことについて学んでもらわなければならないのです。このことは、他の障害も含めて言えることだと思のだ。

そう言えば、この世にまったく障害のない人などいるのだろうか。そのことを考え、私の言う障害という言葉に過敏にならないでいただきたい。

「子育てのプロ」 となるために、親としてあなたはどんな時に子供を叱るのだろうか。   

「子どもが悪いことをした時に叱る」と答える人がほとんどだと思う。それでは 「子ども

がどんな悪いことをしましたか」という問いには、どのように答えるのだろう。

もう一つ質問します。  

 「良いこと、悪いことは、何を基準に決めているのでしょうか?」

ここが重要です。

多くの方は、自分にとって都合が 「良い」 か 「悪い」 で判断をされているのではないだろうか。親の都合が悪いからといって子どもを叱っても、子どもはどうして叱られたか分からないのではないでしょうか。あなたが子どもを叱った時の情景を思い出してみて下さい。 特に子どもが小さければ小さいほど、親の都合だけで叱る場合が多く、そのことが子どもをゆがめ、ますます難しくしていくのです。

 L・Dの子どもは「多動」という特徴をもっている場合が多く、じっとしていられないのです。一つのことに集中していられないので、音に反応しやすく、余計に多動になってしまいます。多動で落ち着きのない子どもは、叱られても、叱られても同じようなことを繰り返します。

親は子どもに言ってきかせたり、約束事を決めたりするのですが、あまり効果があがらないので、余 計に腹が立って叱ってしまいます。しかし、子どもはどうして叱られるのか本当に分かっていないのです。

いけないと言われるからいけないのかなと思うだけで、なぜいけないことなのかわかっていないのです。

親の怒りはだんだんエスカレートしていき、自分の決めた枠のなかに入らない子どもに対し、憎しみさえ抱くようになっていきます。

そして、言ってはならない言葉まで言ってしまうのです。 「どんく さい」「バカ」「ウソツキ」「いくじなし」などと、子どもをののしるようになります。それでも親の腹の 虫はおさまらず 、「あんたは橋の下でひろってきた子よ」「私の子どもと思いたくもないわ」と突きはなしてしまうのです。

絶えず叱られるようなことをしている子どもは、L・Dの可能性があると書きました。たとえそうではなくても、何らかの問題を抱えた子どもだと考えるべきです。それだけに、その子どもたちの親は、 問題のない子どもたちの親以上に「子育てのプロ」になっていただきたいのです。

幼く小さい子どもほど、親から叱られるたびに「愛されていない」という感情をもつようになります。

「お母さんは僕のことを嫌いなのだ」と思ってしまうのです。いくら別のところでどんなに可愛がったとしても、 この心の傷は癒えることはありません。 『橋の下で拾ってきた子」と一度言われた子どもは、 何歳になってもその言葉を覚えています。それは、その言葉がどれほどに子どもの心を傷つけたかという証拠でもあるのです。

 

叱られるようなことばかりをする子どもには、親は細心の心配りをしてあげていただきたいのです。 決して親の都合で叱らないで下さい。子どもには、

「どうして、ごはんを早く食べないといけないのか」

「どうして、服を汚すといけないのか」

「どうして、片付けをしなくちゃいけないのか」

「どうして、あの子とは遊んでもいいけど、この子と遊んではいけないのか」

「どうして、勉強しなきゃいけないのか」

「どうして、テレビゲームをしてはいけないのか」

 こんなに面白いテレビを禁じる親は、悪魔か敵かと思かねません。

いけないから、いけないと言うのではなく、子どもが本当に納得するような方法を選んでいただきたいのです。

しかし、これは本当に難しいことです。

だから「親になるために」勉強をしていただきたい 一冊の本を紹介しましょう。

『親業』 (トーマス・ゴードン著、サイマル出版)は、あなたがどれほど間違った子育てをしているかを教えてくれるでしょう。しかも、ここに書かれているのは普通の子どもであって、何らかの障害を持っている子どもはもっともっと子育てが難しいのです。

しかし、この本を読んで自分の子育てがいかに間違っているかに気づいても、ここに書かれていることを実行することは困難でしょう。

それは、本を読み、頭で理解できても、自分の価値観を変えない限 り、その人自身が変わらないからです。

アメリカでは、ゴードンさんたちが「母親教室」を開いています。日本にもこのようなところが増えてきましたので、そのようなところで訓練を受けられるのもよいでしょう。