中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

英国は「アイルランドの祟り」を受けているのか

 英国議会がEUとの協定案を大差で否決した。歴史的大差と言われるほどの
大差での否決だった。
 EU離脱を決めてから思うように事は運んでいない。離脱するにあたって自分勝手に
はいさよなら! と、いううわけにはいかない。 以前、離婚とよく似たものだと書いた
ことがある。 はい、サヨナラといっても相手が承諾してくれないと離婚届に署名して
もらえない。 EU離脱も同じことなのだ。 とにかく離脱に際して巨額の金を支払わ
なくてはならないということもあるが・・それよりもEU側と長い長い交渉の末にやっと
手に入れた「協定」が議会で否決されたということは何が原因か??
 最大の問題は北アイルランドアイルランドの国境を巡って、議会の多くがノーと
言ったのだった。 アイルランドはEU加盟国である。 北アイルランドは英国なのだ。
 この国境での物流の扱いをどうするのか・・・という点で、EUが提示しメイ首相も納得
した案が、今回否決されたものなのだ。
 みなさんもご記憶にあるでしょうがアイルランド北アイルランドとの間で長い間戦いが
繰り返してきたのだったが、いまは収束している。とはいっても、なにが起こっても不思議
ではない。 はっきり言って、北アイルランドは、英国が無理やりにアイルランドからもぎ
取った国土なのだから。
 私は豪州のJA・NEWS新聞の1996年10月号に「差別思想は化け物の好物」と題して
書いたものがあるので、その中のアイルランドのことを書いた部分をここに載せておきます。
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 イングランドアイルランドの関係について書いてみたい。

イングランドは、約八百年に亘ってアイルランドを植民地化してきた。

その上、過酷な「差別制度」を作った。
  これは、イングランドのアングリカン・チャーチを、アイルランド

カソリックアイリッシュカソリック)に押しつける形で作られた。

 アイルランドでは、ほとんどはカソリックだったから、これはアイルランド

への差別と考えて間違いないと思う。
  結婚の制限や、新たに土地を購入することを禁じ、法律家、医師、教師、

軍人、警官になることを禁じる職業規制、或いは雇用制限と、限りない
差別の上に、僅かの収入の内から十分の一をアングリカン・チャーチに収め
なければならないという収奪をやっている。

 それだけではない。一六四九年には、史上希に見る大虐殺をやっているし、

働き盛りの青年を奴隷としてアメリカに送ったりもしている。       
 要するに、イングランドは、アイルランドを信じられないほどに締め上げ、

差別してきた厳然たる歴史が存在する。 そして、それが、途中で一部緩め
られたとはいえ、約八百年も続いたというのは驚き以外にない。
世界史的に見ても、最も過酷な差別かも知れない。

 何と、アイルランドは、第二次大戦後に、やっと独立できたのである。
アングリカン・チャーチは、日本では英国国教会といわれている、立教大学

大阪の桃山学院大学を作った母体である。

 カソリックに対してプロテスタントは、宗教上の争いから血みどろの改革

闘争上できたもので、ヘンリー八世自身が、自分が離婚をしたいがために、
離婚を認めないカソリックから離脱して作ったのがアングリカン・チャーチで
あることは周知の事実である。したがって、イングランドアイルランド差別は、
宗教対立とは全く次元の違うものであることはいうまでもない。

 八百年も虐げられてきたアイルランドは、十九世紀の半ばに、大飢餓で百万人

もの餓死者を出し、百五十万人がアメリカやイギリスに移住している。
 アメリカに移住した子孫の中から、ケネディ大統領とレーガン大統領が出て

いるが、それまで、WASP(ワスプ=ホワイトで、アングロサクソンで、
プロテスタント)しかなれなかった大統領に、アイルランド系の人が就任したと

いうことは、アメリカにおける、一つの差別がなくなった時でもあった。
  また、イギリスに渡った移民の子孫の中から、あのビートルスのジョン・

レノンが生まれているが、イギリスでは、今なお、アイルランド人に対する職業的
な差別は存在する事実がある。