中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

旅の思い出あれこれ(7)ニューヨーク

3月に連載を初めて、しばらく忘れていて5月4日に連載を復活したのに
またまた・・忘れていました。ごめんなさい。
この連載はJA・NEWS新聞に連載したものです。
このニューヨークの思い出は古い話になりますが、当時の思い出でも
あります。
旅の思い出あれこれ 「ニューヨーク」 アメリカ)

初めてニューヨークに行った時のことは強烈に記憶している。私が最初に行った時はJFK国際空港だった。それ以降はラガーディア空港とJFK国際空港が相半ばしている。 

 実は初めてNYへ行くまでは、あまり良い印象を持っていなかった。にもかかわらず強烈な印象を受けたのは、やはり摩天楼だろう。だれが名付けたかは知らないが「摩天楼」とは言い得て妙である。天を衝(つ)くような超高層ビル群に新世界を感じたものだった。ドボルザークがヨーロッパからニューヨークに移り住み、交響曲「新世界」を作曲した気持ちがよく理解できるような気がする。

喧騒とエネルギーの街

 街を歩きながらよく見ると、お世辞にもきれいだとは言えない。特に裏町のビルの外壁や窓枠などにも経年の傷みと汚れが見られて、むしろ汚いと言った方が適切かもしれない。

それなのに、一日中街を歩いていて私の体に伝わってくるものは、言い知れぬエネルギーだった。アメリカの他の都市や、ヨーロッパの都市などで一度も感じたことのない経験だった。エネルギーを体いっぱいに受けながら、このエネルギーはどこから生まれてくるのだろうと不思議に思ったものだった。

街中に車が溢(あふ)れ、やたら警笛を鳴らす。警笛をあまり使わないパリなどのヨーロッパの都市に比べると品のなさを感じる。車の警笛とパトカーのサイレンとが一日中交錯しているようなイメージさえある。汚れが多く、喧騒と品のなさという二つのフレーズで括れそうな都市なのだが、どっこいそうは簡単に言い表せないのがニューヨークのニューヨークたるゆえんでもある。

 ともかく最初は、お上りさんらしく国際貿易センターやエンパイアステートビルなどに登る。どちらもかなりの時間行列に並んでエレベーターに乗れた。周囲に超高層が多いせいか、どちらのビルにも感動が湧かなかった。国際貿易センターの方は、折悪(あ)しく雨雲が眼下に見え隠れしたのでビルの高さを実感したぐらいである。

 ニューヨークには何度訪問したのか正確には覚えていないが、十数回ぐらいかなと思う。家内とも5回行っている。私がNYへ行こうと誘っても気乗りがしない風情だったが、一度行っただけでNYが大好きになったようだ。

ミュージカルを見ないで帰るのは野暮

 NYでは何よりもブロードウェイでのミュージカルを楽しむ。「42nd Street」「ミス・サイゴン」「コーラスライン」「レ・ミゼラブル」「キャッツ」「オペラ座の怪人」「マンマ・ミーア」など、同じものを何度も観劇した。同じ年にロンドンのウエスト・エンドで同じ演目を観劇したことも数度あった。

 ニューヨークで感じるエネルギーの一部は、ミュージカルにあるかもしれないと思う。世界中からミュージカル出演を目指して集まる彼、彼女たちは数知れない。毎日を信じられないほどの猛烈な訓練に明け暮れながらチャンスを待つ。最近「コーラスライン」が復活されたが、そのオーディションに2500人が街に並んだというからすごいではないか。たかがミュージカルなどと侮ってはいけない。その裏に流れている大きなエネルギーが、ニューヨークを支えている一部なのだ。

ディナークルーズの魅力

 家内のお気に入りは、ディナークルーズだ。41丁目の桟橋から出発しハドソンリバー、イーストリバーを巡る約3時間のマンハッタン一周クルーズだ。荘厳で華麗な雰囲気が特徴の船には、ロマンチックな月明かりのクルージングに最適な最上階デッキと、ニューヨークの夜景を望む見晴らしの良い窓がある。ハドソンリバーを下り、マンハッタンの先端を周回した後、イーストリバーを上り、ブルックリン橋の下を通る。国連ビルや自由の女神像を通過するとエンパーアー・ステートビルやクライスラービルアールデコ調の尖塔が見えてくる。クライスラービルの尖塔はうろこ状の照明が美しいので、家内と私の間では「うろこのビル」でお互いに理解し合っている。船の中の催しも粋だが、何よりも黄昏(たそがれ)時のマンハッタンの美しさは他に例えようがない。

 もし、この記事を読んで行ってみようと思う人にアドバイスがある。下船時にタクシーの予約をしておくことだ。それを知らないで、下船後をタクシーが通る道まで歩いて行ったわずか15分間は本当に怖かった。あまりにも暗い道だったからである。

 ホテルは、どこでもよいと思っているが、最初の頃は「北野ホテル」を愛用していた。レーガン大統領もここのレストランで食事をしたという小ぶりのホテルだが、何よりも食事が美味(うま)いのとパークアヴェニューという足場の良さがある。

 ウエストミンスター・ドッグショー

 毎年2月中旬にニューヨークで開催される名物行事に「ウエストミンスター・ドッグショー」がある。アメリカでは3千頭以上のドッグショーは珍しくないが、ウエストミンスターの場合は、会場の都合で選び抜かれた2500頭の犬が参加できる。会場は、あの有名なマジソンスクエア・ガーデンだ。今年が135回だったので、このドッグショーが初めて開催されたのは1877年(明治10年)だったということで、犬との関わり方の歴史の違いを感じる。私の所有するシベリアンハスキーとシェットランドシープドッグもこのショーに参加したので応援に行ったことがあり、別の年には数人を連れて案内したこともある。

 何よりも驚くことは、ニューヨークのど真ん中にあるホテル群が、犬の同伴を認めている点である。このドッショーの期間はホテルの内外は犬だらけの様相を呈する。ホテルの屋上は排泄させるための場所になり、各部屋にはケージに入れられた犬がいる。エレベーターの中では見知らぬ犬同士が鉢合わせするが、牙をむいたり吠(ほ)えるような無粋な犬はいない。とにかく、あまりにも日本と違うことが多過ぎて驚くばかりであった。

 あれもこれも

 5番街を散策した思い出や、危険だといわれるハーレム地帯にも足を踏み入れたことがある。メトロポリタン美術館での思い出もあるが、最後に一つだけ。セントラルパークの中に、屋根の部分がガラス張りのレストランがある。一度アメリカ人の友人に連れられて行った時の印象が素晴らしかったのだが、その後は探しだすことができずにいる。

 とにかく、ニューヨークはピンからキリまで何でもあり、マンハッタンは思いのほか広いのだ。ひたすら歩く、場合によってはタクシーに乗るが、NYの地下鉄には乗らないことにしている。