中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

「がんと闘うな」の近藤誠さん「菊池寛賞』受賞

 慶応大学放射線科の医師が『菊池寛賞』を受賞した。菊池寛って誰のこと?
って思う人は、まずは菊池寛について調べてからお読みいただきたい。
 
 代表的な本としては「患者よがんと闘うな」がよく知られているが、近藤先生の
がんと関連する本は数十冊も書かれている。
菊池寛賞の授賞の対象となったのは、これらのすべてに対してものだった。
まずは近藤先生に「おめでとう」と申し上げたい。
本を書いて、この人ほど反論の嵐にまみれた人も少なかろうと思う。
 私には、なぜ反論が起こるのか不思議でならなかったからだ。これまでにも、
さまざまな場所で、近藤理論なるものを支持してきた。指示したと言っても、
そのすべてに同意したというわけではない。近藤先生が、がん患者に向かって
何を言いたいのかがよく理解でき、概ねにおいて賛成だったからである。
 近藤先生の著書に対して、おおくの反論書が書かれている。そのすべても読
んでみた。そして感じたことは、反論している人はすべて医者であるということだ。
そして、医者であるがゆえに反論せざるを得ないのだと思うけれども、反論の
根拠がほとんど近藤先生の言葉尻をつかまえてのものばかりである。
 私は、多くの人たちに語った。近藤先生の書かれたものは正しいと思う。
しかし、書かれた言葉をそのまま受け止めるのではなく、何を語られようと
しているのか、行間を読む力をもとめられていると。
 近藤先生の書かれたものを批判する人たちは、おそらく文章を読む力に
欠けていると思っていた。先生がいいたいことが、こんなに伝わってくるのに、
どうして反論などするのだろうかと思っていた。
 今回の『菊池寛賞』受賞に際して書かれた文章を紹介したい。誠に短く上手に
まとめられていて、この人にも敬意を表したい。
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 「本質を見据えての優しさ」 後藤正治(ノンフイクション作家)
近藤誠氏の「著作の一読者であり続けてきたが、いつも一つの主調音が
伝わってくる。
 がんの本質は遺伝子の変異であり、老化の一形態であり、自己自身に
他ならないことー。積年、研究者・臨床医として歩んできた中で視えている
ものがあるのだろうと思う。そして、こういうことががんの本質を見据えつつ、
患者はそれぞれの人生観に基づいて個としての選択をすればよい。というのが
著者を貫く主調音である。
 がんで亡くなったノンフイクション作家・柳原和子さんより、臨床理・近藤誠の
患者への優しい対応を耳にしたこともある。がんの”特効薬”ないという意味では
突き放す印象はあるが、氏は患者に対してよりベターと思われる選択肢を提示
する医師である。人はすべからず潜在的にがんを内包させている存在であって、
がん患者とはたまたま顕在化させてしまったひとたちであるということ。
その優しさもまた、がんの本質の認識より由来しているのだろう。