中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

随筆自伝(188)私を守ってくれたのはだれなのか

 Janews新聞 2008年1月掲載

   日本の医療問題を考える(9)

 神戸市では「神戸医療産業都市構想」のもとポートアイランドにおいて壮大な計画を進めています。ポートライナー線には「先端医療センター駅」があり、その周辺には先端医療振興財団の臨床センターと研究所、理化学研究所の発生・再生科学総合研究センター、神戸バイオメディカル総合センター、神戸臨床研究情報センター、神戸バイオテクノロジー研究・人材育成センター、医療機器開発センターなど先端医療の各施設ビルが二十以上も立ち並んでいます。神戸中央市民病院もまもなくこの地域に移転準備を進めます。この地域はいまや神戸の顔となりつつあり、今後は多くの医学関係の学会も開催されることになるでしょう。その概要をお知りになりたい方は以下のアドレスを参考にしてください。

http://www.city.kobe.jp/cityoffice/27/kigyo-yuchi/iryokannrenn/

 二月三日に、この先端医療センター地域にある神戸臨床研究情報センターにおいて、アメリカの米国若年性糖尿病財団理事長のロバート・A・ゴールドスタイン氏を基調講演の講師に迎え「先端医療と市民の協働を考えるシンポジウム」が開催されます。このシンポジウムの実行委員長に私が選任され準備に追われています。もちろんパネラーとしても参加します。「兵庫県がん患者会団体等連絡会」会長として、県の「対がん基本方策」への取り組みとかかわるなど多忙な日々を送っています。また、十二月十五日には、福岡市で開催された「日本放射線腫瘍学術学会」において「誰に学ぶか」と題して学会に集まった医師たちに講演してまいりました。

財団法人・先端医療財団の西川研究所長と私の対談が下記に掲載されておりますのでご覧ください。(P 33-35) http://www.ibri-kobe.org/event/pdf/anual2006.pdf

 「がん」を知ろう(5)

「肺がん=その2」

 先月に引き続き肺がんについて書いてまいります。肺がんは、がん全体の二〇%に迫るほど多いがんでもあります。その一面、早期発見さえすれば治りやすいがんでもあるのです。問題は、どのように早期発見すればよいのかということではないでしょうか。肺がんは喫煙者に多いがんですが、たばこを吸っていないからといって肺がんにならないわけではありません。ですから四十歳を過ぎたら毎年のように胸部X線検査を受けてチェックし、検査で疑いがもたれた場合は、胸部CT高分解能診断を受けることによって診断がほぼ確定できます。

 肺がんだと告知を受けたとき、すべてのがんに共通することですが、以後の治療方針を決めるのに、ここでもステージが大切な要素になってきます。肺がんの場合「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」の二つのケースがあります。「小細胞肺がん」は、進行が早く、転移もしやすいがんとも言えます。一面、放射線治療抗がん剤治療に比較的反応が良いがんともいわれています。多くは肺の真ん中辺りに出来やすいがんです。「非小細胞肺がん」は肺の周辺に出来やすいがんで、抗がん剤などへの反応は比較的低いとされています。

 肺がんになる確率は、たばこを吸う人と吸わない人での割合は約七二%対二八%となっています。

肺がんに多い「非小細胞肺がん」をステージを考えますと、三センチ以下のがんをⅠAとし、3センチ以下で同側の肺門リンパ節に転移がある場合をⅡAと言います。がんが胸壁に及んでいないがリンパ節に転移が見られるものをⅢAと言い、がんが反対側の肺門リンパ節や鎖骨上リンパ節などに転移が見られる場合をⅢBと言います。肝臓や骨、脳などに遠隔転移しているものをステージⅣと決めています。

どのステージでがんが見つかるかによって治癒率がまったく異なるのは、他のがんの場合も同じですが、肺がんの場合は極端な違いが見られるようです。早期に見つければ治癒率が高いがんでありながら、実際には肺がんで亡くなる方が多いのも事実です。どうしてこのようなことになるのでしょうか。その理由は、早期の段階では自覚症状がなく、自覚症状が出てきたときには、すでにステージが進んでいるからなのです。ですから、咳(せき)が止まらないなどという症状が出てきてからでは打つ手がなくなっている場合もあります。

早期発見というのは、症状がまったく出ていないときに検査を受けて発見される場合を言います。ステージⅠAであれば手術の必要もなく、最新のピンポイント照射による放射線治療を受ければ完治率が八十%越えるまでに医学が進んでおります。

一方、肺がんは比較的がんの進行が早く、ステージが進んだ状態で見つかった場合は手術や抗がん剤での治療が基本的です。ステージⅠAでの五年生存率は七七・四%、ステージⅣでは五年生存率が五・六%という数字が出ています。特に男性の場合は、四十歳を過ぎたら毎年肺がん検査を受けることをお勧めします。

 「胃がん」について

胃がんは肺がんに次いで多く、全体の一六%を占めています。しかし、肺がんが右肩上がりに増え続けているのに比べ、胃がんは年を追って減りつつあります。塩辛い漬物などの摂取量が減るなど、食事における塩分に対する意識の高まりが影響していると考えられます。胃がんの場合も早期発見が生存率に大きな関係を持っています。胃がんの場合のステージについて書いておきましょう。T1は、がんの浸潤が粘膜または粘膜下組織にとどまっているものであり、T2は、がんの浸潤が粘膜下組織を超えているが、固有筋層または漿膜(しょうまく)下組織にとどまっているもの。T3は、がんの浸潤が漿膜下組織を超えて漿膜に達しているか、これを破って腹腔(ふくこう)に露出しているもの。T4は、がんの浸潤が直接他の臓器に及ぶもの。T5は、がんの浸潤の深さが不明なものとなっています。

これを分かりやすく解説しますと、胃がんの場合は胃壁に「粘膜」「粘膜下組織」「固有筋層」「漿膜下組織」という四層があり、がんがどの層まで達しているかによってステージの違いがあることが分かります。早期に発見した場合は、胃壁の最も表面の粘膜にがんがとどまっていますから、それを切除すればほとんど完治します。がんが胃壁の深い層まで浸潤している場合でも、リンパ節などへの転移が見られない場合は、胃を全部取り去るなどの手術で治る確率が高いのですが、胃壁の2層、3層までがんが達している場合には、すでに遠くまで転移している可能性が高く、万一すでに遠隔転移をしている場合は、手術が成功しても、何年か後に転移した場所にがんが顔を出してきます。五年生存率というのは、こういう場合、手術後五年たっても生きているということは、遠隔転移がなかったからだとみなすという意味でもあります。

こうしてみますと、胃がんにおいても早期発見早期治療が大切なことが分かります。塩分やお酒は控えめにするというのも予防に役立ちます。胃がんの場合も、四十歳を過ぎたら毎年胃カメラ検査をお勧めします。最近は胃カメラも細くなり、また鼻から入れる胃カメラも開発されていますので、検査が楽になっています。手遅れにならないようにしましょう。胃カメラ検査で大切なことは、胃がんの中でも胃壁に盛り上がるタイプと陥没するタイプがあります。盛り上がるタイプは発見されやすいのですが、陥没タイプは見逃されやすいので、胃カメラ検査に優れた医者を選ぶことも大切な要素だと言えるでしょう。