中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

酒を飲める人がうらやましい(4) 初めての酒

 胃がんかもといわれて、じゃあ、先祖代々大好きだった酒というものが
 どんなものか味わってやろうという気持ちになった。
 それを当時、神戸・大丸の宣伝部長をしていた小貫氏(彼とは数年前に
 亡くなるまで友達だった)に伝えると、そうか、じゃあ俺が連れていってやる、
 と大丸に近いセンター街の柳通りにある「シャネル」というバーに連れて
 行ってくれた。
 シャネルは、また項を改めて書きたいが、ここは文化人が集まる「巣」でも
 あった。
 小貫氏はシャネルの常連ではなかったのに、どうして私をここへ連れて行った
 のかを聞いたことがない。
 シャネルにはサントリーのホワイトしか置いていないという個性的な店だった。
 ママが日本が台湾を統治していた時代の最後の知事の娘であって、学もあり
 プライドの高い美人ママ(といっても、その頃はおばあさんだったが)だった。
 その日はまだ早い時間で、カウンターで小貫氏と話し合いながら生まれて
 初めての水割りを飲んだのだった。
 彼とは、その後さまざまな店に行った。粋な小料理屋さんで日本酒を酌み交わし
 ながら2、3時間も話し合っていた。
 その頃に彼が「俺はこの間までニュージランドとオーストラリアへ出張で行って
 来たんだよ。定年になったら絶対にあっちに住もうと決めたよ。もう、生活の
 質が違うんだから、ちゅんさん(中原なので、ちゅんさんと呼ばれていた)
 老後は外国だぜ!!」と言い、二人で固い握手をしたことがある。
 その日の会話が、私をオーストラリアへ移住させるきっかけになった。
 酒を飲まなきゃ、こんな機会はなかったと思う。酒を飲まなきゃ、喫茶店では
 ここまで話がはずまなかったとも思う。
 (続く)