中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

イチロー打法批判で全米騒然

   まずはニュース記事から読んでください。
欧米では、私たちが日常的に使っている「箸」について差別的な見方をしている
人もいるようです。イチロー打法を箸で打っているようだと解説者が言ったことで
アメリカでは「差別的発言だ」と騒然となっているようなのです。
ニュース記事の後に、私が10数年前にJAニューズ新聞に書いた記事(わたしのHP 
の中の「我が人生思いでエッセイ」の中に掲載)をここに貼り付けておきます。
箸文化と言うものは、西欧のスプーンやフォーク文化よりすぐれものだという
ことをぜひ知っておいてもらいたいからです。
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11年ぶりに悲願のポストシーズン進出を決めたヤンキースイチロー外野手(38)の独特の打法が、改めて全米を揺るがす大騒動を引き起こしている。米ニューヨークの地元テレビ局の解説者が、イチローのバットを『チョップスティック(箸)』に例えたことから、この発言が差別的であるとして、視聴者から抗議が殺到する騒ぎになっているのだ。絶対的なスターとなったイチローは、今も米国で戦い続けている。
 騒動の発端は、ヤンキースが延長12回の末、4-3で逆転勝ちして地区優勝マジックを1とした2日(日本時間3日)のレッドソックス戦(ヤンキースタジアム)。延長11回に打席に入ったイチローが、外角低めのボール気味の変化球にバットを出し、遊ゴロに倒れた場面だった。
 地元テレビ局YESネットワークの解説者、デビッド・コーン氏(49)がこう発言したのが問題になった。 「ボール球だが…、イチローは(打った)…、チョップスティックで」
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          食文化について  中原武志  (JA・NEWS新聞・豪州・パース)
 
 さて、今回は「食文化について」という重々しいタイトルをつけましたが、内容は今後も含めて、至って単純かつ興味本位に書いていきたいと思います。ですから、読まれる方も、肩肘張って読むのではなく、そんな考え方もあるか、という程度に受けとめていただいてご愛読いただければ幸いです。
 パースに住んでいて、何が不足かというと、やはり食べ物だろうと思います。食べ物さえ美味しかったら、食材の種類がもっとあればそれこそ天国なのに、と思っている日本人が多いだろうと思うのです。言い換えれば、そのように思わない日本人はごく少ないのではないでしょうか。
 しかし、ないものねだりをしてみても仕方ありませんから、私達は、パースに来てからいろんなものを自分で作って、自己満足の日本食もどき食を毎日のようにいただいています。
 オーストラリアというか英国系文化には食文化はないのか、という露骨な批判も聞かれるほど美味い物がないのは事実だと私は思っています。
 さて、今回はそのような不満を書きたいのではなく、「箸」について考えてみようと思うのです。何を使って食べるのかを考えますと、世界には大きく分けて 3つの方法があります。一つはスプーンとフオークとナイフを使う方法であり、もう一つは箸を使って食べる方法、そしてもう一つが手を使って食べる方法です。これら3つの方法の中では、手を使って食べる人達が世界中で一番多いといわれています。
  「箸」を礼賛する人たちは、手で食べるのは、人類が古代からやってきたことであり、ナイクとフォークとスプーンは、手の形から発達したもので文化とは言い難い、箸こそ文化であると声を大にして主張しています。そう思いたいほど、私達日本人にとって「箸」は切っても切れないほど縁の深い、なくてはならないものだといえるでしょう。
 中華料理などのアジア系レストランへ行きますと箸が出てきてほっとします。また、日本レストランで、外人?が箸を上手に使って食べているのを見ると何故か嬉しくなったりします。使い方の分からないような外人には、ついおせっかいにも使い方を教えたりして、それがきっかけで会話が弾むこともしばしばです。
 読者の皆さんは、アジアではみんな箸を使うものだと思っていませんか?あるいは、中国、韓国などは「箸を使って食べるのが普通」だと思っていませんか?ところが、箸だけを使って食べる国は日本だけなのです。もちろん、学校給食などでスプーンを使うために、最近では箸を上手く使えない人も少なくなくなってきましたので、日本の食文化も変わってきていることは確かです。しかし、原則的に、日本は箸のみを使う食文化であることをもう一度確認してみようと思います。
 まず、韓国はどうでしょうか。韓国というより朝鮮半島というほうが正しいかもしれません。朝鮮の人たちは、まず「匙」が基本なのです。匙で食べられないものだけを「箸」で食べるわけです。ですから、料理も匙で食べるものが多く、箸を使うのはナムルなどの箸でつまめるものということになります。ですから朝鮮では「匙と箸」で食事をするのですが、実は中国も同じなのです。日本でも匙を使うではないかと言う向きもあるかと思いますが、日本の場合とまったく違うということもあとで書きましょう。
 ベトナムなどは、ヌードルが中国から入ってきて(ヌードルは世界的に中国が発祥の地です)ヌードルを食べるために、あとから箸が入ってきたという経緯があるようです。そのように、国によっていろんな経緯があるのでしょう。その点について詳しい方があればお教えください。
 食べ方が違うということは、同じアジア系でも料理が違ってきます。そしてマナーも違ってくるのです。韓国へ旅行された方は気付かれたと思いますが、韓国では、器を持たずに食べます。妙齢のお嬢さんでも、片肘をテーブルについて器に口を寄せて食べます。日本的にはとても行儀の悪い食べ方ですが、これが韓国では正式な食べ方なのだそうです。
 ところが、韓国人は、日本人が器を手に持って食べているのを見ると、なんと下品な食べ方だろうと思うそうで、同席していると気分が悪くなるといいます。
 実は、このようなマナーの違いは、食べる道具の違いから来ていることに気付かないで、お互いに下品だ、野蛮だと思っているのです。
 韓国では、金属製の器が重んじられます。昔は銀製だったらしいですが、その名残で、いまはステンレスが主流です。大きくて重い器です。器を手に持たない食べ方ですから低いテーブル(お膳も)では困るわけで、テーブルも昔式なお膳も日本のものよりうんと高くなっているのです。
 料理もスープ類、粥類が多く(汁掛けとか、汁を混ぜ合わせたものも)そのために匙が重宝するのか、匙文化だからそのような料理になったのか私にはわかりません。
 器を手に持ってよいのは酒とかの飲料を飲むための場合だけらしく、酒の席ではテーブルや膳も低いものが用意されることがあるようです。また、食事の間、匙をテーブルに置くということはありません。匙を持ったら食事が終わるまで匙は手に持っているか、器の中に入れておくのがマナーなのです。
 中国料理店で、中国人たちが食べているのを見ると、日本人とはかなり違った食べ方をします。匙を使う場合も多く、手を使う機会もかなりたくさん見かけます。
 日本料理はその点、やはり「箸」を使うことを原点にしているようです。見た目にも美しい日本料理は、箸で食べられるものばかりです。形と堅さなども箸を使うことを考慮されています。ですから、日本料理は皿や鉢物などにきれいに盛り付けができるわけです。室町時代に確立されたといわれる日本のさまざまな様式文化の中に、日本料理に関するさまざまなマナーもできたのでしょう。
 箸の取り方持ち方などもかなり厳しいマナーがあって、私の年代では、それが当然のようになっているものの、現在の若者達にとってはどうなのでしょうか。
 実は、日本の鉄道の駅で売られている「駅弁」を思い出し、懐かしく思い、他の国では日本のような駅弁のないことを思い、食べたくなり、地方の特産物を生かした「駅弁」の多彩さに今更ながら驚き、その美しさはなぜだろうかと考えているうちに「箸文化」に思い至ったというわけです。日本の駅弁に優る「列車内食事」があればお教えいただきたい。特等席も二等席もなく、誰でもが平等に美味しい駅弁を食べられる幸せは日本だけだと思いますがいかがでしょうか。
 これこそ「箸文化」あっての賜物ではないでしょうか。ああ、駅弁を食べながら旅をして、おおきな露天の温泉につかってみたいという夢を見ました。