中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

外交は謀略なのか

 先日、友人たちとお茶を飲みながら話しをしていた時のこと、一人が言った。
「外交は謀略だ」と。
 私は即座に、それは違うと否定した。もし、外交が謀略だとしたら、外交が
成り立たない。最初から謀略と分かっているのに交渉することもできないし、
調印だって不可能となろう。
 では、外交に謀略がないのかというと、それはあるだろうと思う。謀略が
含まれていると言うことと、最初から謀略ありきと言うのでは全く違う。
 普通の人は外交官に接する機会は少ないだろうが、私の場合は、一般国
民としては、割合多くの外交官と接する機会があった。14年間、代わる代わる
入れ替わる外交官に接してきたので、いくらかは知っている。
 外交に関しては、佐藤優氏や手島龍一の著書にくわしく書かれているので、
参考にしてほしい。
 外交の基本は「情報収集と分析」である。日本の外交が駄目だと言われる
原因は、情報収集能力が低いからであり、分析力が劣っているからなのだ。
 その原因は、外交官試験を受かったというエリート意識があったためだろうし、
外交官試験がなくなった後も、特別なエリート意識が捨てられないためでは
ないかと思っている。
 だいたい、エリート意識を持つ人たちには特徴があって、勉強はできるが、
世間を知らない連中が多い。日本が日露戦争に勝ったのは、当時の外交官
の情報収集力が優れていたからに他ならない。
 もし仮に、一人のすぐれた外交官がいて、第1級の情報を集めたとしても、
それを分析する上部の連中がバカだと、せっかくの情報が役に立たない。
 外交には「プロパガンダ」という手法も使われる。プロパガンダは、国内向
けにも使われるが、ようは政府が内外に向けて「都合のよい情報」を流す
ことなのだ。
 一つの例を書いておこう。
第2次世界大戦直前のアメリカ国内には厭戦気分が溢れていた。イギリスの
チャーチル首相は、盛んにアメリカの参戦を促していたが、アメリカ政府は
戦争に入ることが出来なかった。
 その頃、日本が中国で大衆を虐殺していると言う写真が大々的に報道
され、アメリカ国民の気持ちが参戦に傾いたのだった。その時の写真が
本物かどうかどうかが問題ではなく、たった一枚の写真をプロパガンダ
利用して成功した例として有名である。
 この場合は、アメリカ国内向けのプロパガンダにもなったし、外国向けの
プロパガンダにもなったのだ。
 いま、中国は複雑な動きを見せている。空母を作ったり、近隣アジア諸国
経済水域問題で紛争を起こしている。国内に大きな問題を抱えて収拾が
難しい時、政権は国民の目を外に向けさせるのは常套手段である。
 中国が、近隣国と問題を作り出していると言うことは、国内に大きな問題を
抱えていると言うことでもある。しかし、国民は政府のプロパガンダに上手く
はめられてしまうのも、いつものことだから、中国国民も騙されているのだろう。
 中国はしたたかであり、外交面でも上手い。アメリカ、イギリス、ロシアの
ような情報局を持っているのだろうと推察される。そう言う点では、日本は
彼らからみれば「赤子の手をひねる」程度のものなのだろう。
 高度の情報収集には、そういう人材を育てる手はずを整えなければなら
ないが、今の日本にはない。100年前の日本の外交戦略がより優れて
いたことを思えば、これは戦後の日本政府の怠慢が招いた結果と見るべき
だろう。政府は、インテリジェンス養成に本腰を入れてもらいたい。