高峰高峰秀子著「おいしいお話」の中から、選んで紹介しています。
山田風太郎編(3)
雑炊とは兄弟のような食い物だが、汁かけ飯というやつも時々はウマいものだ。これはCクラスの食い物だとつつしむところもあるので、このごろはあまりやらないけれど、それでも味噌汁がホウボウとかカワハギなどの白身の魚をダシにつかったものだと、つい汁かけ飯にすることがある。鮭の酒粕汁が大好物であった。
[一月二十二日]
朝、酒粕汁を拵える。美味。
[二月一日]
酒粕にて夕めし。
などとある。膨大な日記をいいかげんにひらいて見かけたものだが、相当な頻度である。
さて、酒粕汁の汁かけ飯がウマいとは、右に書いたとおりだが、それであるとき、それならはじめから粕汁の雑炊を作ったらさぞウマいだろうと思いついた。で、作らせてみた。すると、これが全然ウマくない。ウマくないどころか泥のようなD級のしろものになってしまった。
次にこれは成功例の話。
わが家で愛用する料理に「チーズ肉トロ」と称するものがある。例のとろけるチーズを薄い牛肉で握りこぶしの半分に包み、サラダ油で焼いたもので、これをナイフで切って食う。正しくは肉のチーズトロというべきだろうが、ごろの関係で「チーズの肉トロ」と呼んでいる。
材料が上等だが、二、三分で出来る料理だし、高級レストランなどではまず出てこないだろうから、やっぱりB級グルメの一種といっていいかも知れない。