中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

「一月(いちげつ)物語」を読んで

 大学現役で「日蝕」を書き、芥川賞を受賞した平野啓一郎さんの受賞後第1作になる
「一月物語」を読んだ。 妻が先に読み「難しかった」と言っていたので「日蝕」同様に
難解な部分があるかと思っていたが、どんどん読めた。
 もし、この物語が、安易な表現で書かれていたとしたら、なんの面白みもなかっただろう。
しかし、「一月物語」は、重厚な文章に守られながら読者をどんどん引っ張っていく。
行間が広く僅か170頁の短い小説であるが、素晴らしい文章力で物語を重厚なものに
仕上げている。
 ぶっちゃけて言ってしまえば、魑魅魍魎、狐狸妖怪、陰陽師の詳しい内容を知っている
人には、納得が早いかもしれない。これらの要素に性欲を絡めてかいている。
性欲と関係のある言葉として端的なものは、蛇、月下美人、美しい蝶、クロアゲハ蝶などだ。
 例えば、村上春樹さんの作品のほとんどには以上の要素の他、3Dの世界や、深地下まで
含まれていると思えばよい。 
 私も、このような小説を書く要素を一つだけ持っているのだが、悲しいことに老いすぎて
体力がなくなってしまった。 もしタイトルを決めるとすれば「庵の山」にすることだろう。
そこで拾った10個の小石が、私の人生に大きく関わったのではないかと、今になって
おもうことがある。 書き方によっては「一月物語」より面白くなるかも・・などと、傲慢にも
思う。