中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

「オナラ残酷物語」(1)

JA・NEWS新聞  2010年1月号(コラム)
「オナラ残酷物語」(その1
 
「出物腫れ物所嫌わず」(でものはれものところきらわず)と昔の人はよく言っていた。その反面「場所をわきまえろ」とも言う。だれもが毎日出るはずのオナラ、出ない人もいるのだろうか。私はこのオナラに悩まされて半世紀以上がたつ。原因は分からないが、多分5歳ごろに患ったらしい腸チフスが原因だろうと自分では思っている。「けつの穴が開いてしまって、おまえは死んだと思ったものだ」と何度聞かされたことか。とにかく死んだときにしか肛門(こうもん)が開いてしまわないのだそうだが、大変な症状の末に、そのような状態になって、だれもが、ああ…かわいそうに、と思ったらしい。
 40歳のときに肛門からバリウムを挿入しての大腸検査を受けたとき、写真を見ながら医師が説明してくれた。「普通、腸というものは、くちゃくちゃと縮んでいるものなのですが、あなたの腸はだらしない感じですね」と。腸チフスの件を話すと、それが原因かもしれませんね、と言われた。それから、すべては腸チフスのせいだとあきらめてはいるが、とにかくこの現象は辛(つら)いものがある。まあ聞いてください。
 まずは小学校3年生の明治節(今では文化の日校庭に集まって儀式が行われる。教育勅語が読まれ始めると最敬礼の姿勢のまま最後まで聴かなければならない。最敬礼というのは体を90度にまで曲げるのだが、このときブッと出た。式が終わると担任の先生がちょっと来いと私を引っ張って行き「おまえ、畏(おそ)れ多くも天皇陛下教育勅語のときに屁(へ)をこくとは何事だ!」と三度も顔面を殴られたものだ。出物腫れ物所嫌わずなどというのは嘘(うそ)で、出る場所が悪いと殴られるということを嫌というほど実感したものだった。
 成人してから、なぜかしばらくこの悩みがなかったように思う。40歳のころゴルフを始めた。日本のゴルフ場の多くは山岳地帯に造られていて、ティーグラウンドが一段高くなっていることが多い。コンペで世話人をし、「本日は楽しみましょう!」とあいさつした後ティーショットを打ち、では、お先に!とティーグラウンドから駆け下りるとき悲劇が起こった。そのとき、ブッと一発出たのだが、急な下りの場所なので走り下りる一歩一歩ごとに、ぶ・ぶ・ぶ・ぶ、と止まらない。みんなティーグラウンドで大笑いしている。20発ほど出ただろうか。
とても恥ずかしかった。顔面から火を吹くってこんな時のことを言うのだろう。あれから35年…どれほど辛い思いをしたことだろう。赤面人生はまだまだ続いている。
(この項続く)