中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

「平穏死10の条件」が売れているのは事実だからだ。

 最近ではあまり聴くことも観ることもなくなったが「講談」と言うのがある。
私よりひと昔の人たちの楽しみは、浪曲浪花節)と講談を聴くことだったろうと思う。
私の祖父などは、風呂あがりに酒を飲んでは、浪曲を歌い、講談や歌舞伎の声色(こわいろ)
を立って楽しんでいたものだ。今ならさしずめ「カラオケ」を楽しんでいるようなものだったの
だろう。
 「講談師、見てきたようなウソを言い」という言葉がある。戦国時代の武将物語などは、
あたかもその場に居合わせたかと思わせるほどの迫力と、こまかい描写が語られるので、
そのような揶揄がうまれるということだろう。
 しかし、講談師が、昔の物語を、あたかも見てきたように語るのと、自分史を語るのとでは、
本質的に違う。
 最近、私たちのグループが相談医としてお世話になっている、長尾和宏ドクターが
「平穏死・10の条件」を発行された。今月号の月刊「文藝春秋」にも、10ページほど掲載
されているから、今の売れっ子だといってよい。
 素晴らしい本で、ぜひとも老いも若きも読んでいただきたい本だ。
ところが、この本にケチをつける人たちもいる。病院勤務医などは、真っ先にケチをつけたいの
ではないだろうか。
 人は100%死ぬ。どこで死ぬかが問題なのだ。昔は95%以上もの人が自宅で死んでいた。
家族の多くが、人が死ぬ姿を見てきた。ところが現在が違う。90%もの人が、病院のベッド
で死ぬ。どこで死んでも。本人の自由だが、その自由があるようでないから困るのだ。
 患者は、病院の都合で、退院やら転院を強制することだってある。今の保険法では、
何週間も入院してもらっては「儲からない」からである。
 病院と自宅と、どちらで死ぬのが、患者にとって心安らかなのかは、よ~く考えるとわかる。
病院と言う場所にいれば、医療設備が整っているから、助けてくれるだろうと信じている
人たちにとっては、病院を選べばよい。
 あの狭い、病室の、病院によってはカーテン越しに隣の患者が唸り声を上げているような
場所で死ぬことになる。
 私は、少なくても最期の1カ月間は自宅で過ごしたい。見慣れた景色、みなれた環境の
中で、安らかに死の時を迎えたい。
 500人以上もの患者を看取ってきた医師が書いた本が「平穏死10の条件」である。
病院勤務で、患者の最期など、ほとんど看取ったこともないような医師には、長尾先生が
書いたことは理解できないだろうと思う。
 長尾先生と私には、共通点が多い。お父さんの自死のあと、医学部に進み、ものすごい
苦労をしながらまなび、医師免許を取得し、阪大の研修医となり、やがて開業する。
 先生は、後ろ盾になる資金源がないなかで、生きてきた人なのだ。そして、銀行の建物が
売りに出ていることを知って、敢えて獲得して、現在の長尾クリニックを育て上げた。
それだけではない。開業して、のうのうと暮らしている町医者と違って、在宅医としての
活動も凄い。弱者救済の姿勢が貫かれていてすがすがしい。
 私の場合は、両親兄弟のない中で、15歳から丁稚奉公に出された。その苦労はとても
一言では言えない。だが、TVのワイドショー司会者も務めたし。落ちこぼされた生徒たちを
救うための高校も作った。阪神大災害で校舎を失って廃校とはなったものの、1000名以上
の卒業生を世に送り出せた。最近になって、卒業生たちから「会いたい」と連絡が相次いでいる。
 老後は豪州に移住して、西豪州に日本クラブの会長を2期務めた。全豪州の会長も1期
務めた。その甲斐あって、天皇・皇后両陛下から皇居内の御所にご招待されて、2度も握手を
たまわった。豪州・パすに社会福祉法人サポートネット・虹の会を立ち上げた。この組織は
今もパースの地で活動を続けている。2005年に帰国してからは、「はりま粒友クラブ」を
設立し、2007年には「日本がん楽会を作って、いろんな方面の活動を続けている。
 そのどれもこれも、はっきり言って誰にも出来ることではない。献身的な使命感をもって、
強い哲学を持った人にしかなし得ないものだと自負している。
 だからこそ、長尾先生の弱者救済に徹した哲学に共感する。誰もが簡単にできない
ことをやっている人だと、素直に認める人こそ、素晴らしいと思う。
 中傷や妬みはみっともない。自慢することも素晴らしい、自慢できるような人生を誰もが
作ればよいのだ。自慢できるほどのことをしていない人には、少なくとも人の業績を
中傷する資格はないだろう。 長尾先生の本にケチをつける人がいると、先生のブログに
書かれていたのず、思わず応援したくなってしまった。彼が、どんな日々を送っているかは
彼のブログを見ていただくと分かるだろう。http://www.nagaoclinic.or.jp/doctorblog/nagao/
それでも、批判する人は、天の邪鬼だとしか思えない。