中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

医者との対話を充分にすること

これまでに、「医療崩壊」などを書いていますと、私が医師不信者のように
思う方もいるかもしれません。
私は決して医療者不信者ではありません。
医師を尊敬し、信頼しておりますので、私のグループでは8名の先生方に
「相談医」をお願いしているのです。
もちろん、相談医になっていただいている先生方が信頼に足る方々だということです。

最近、セカンドオピニオンと言う言葉が良く知られるようになりました。
セカンドオピニオンとは、現在かかっている医師のほかに、第2の意見を聞くと
言うシステムです。
この場合、現在の医師が信頼できないからセカンドオピニオンを受けると言うのと、
純粋にもう一人の医師から治療方針に対して率直な意見を聞きたいと考えるのでは、
基本的に大きな違いがあります。

今の主治医不信からセカンドオピニオンを受ける場合は、主治医の意見と違う治療方針を
どこかで求めているということになりますから、セカンドオピニオンの先生が主治医と
同じ意見を述べた場合に失望することにもなります。
患者が、あらかじめ自分の望む治療方針があり、自分の想定した治療方針と同じ意見を
述べた医師を信頼する・・と言うのでは本末転倒と言わなければなりません。

一番問題なのは、患者がなまじっかな医療知識を持ち、医師を信頼しない場合です。
インターネットの検索などで十分な医療知識を持っていると勘違いしている患者が
増えています。
もちろん医師にもピンからキリまでいますから、不信感を持つ気持ちも理解できます。
私も、そういう医師に出くわした時には不信感を持ちましたから・・・。

相談医の一人の先生とのメールのやり取りの中の一節をご紹介します。

Q 患者と対応する時、気をつけておられることは?

A 「例えば、同じ肺がんStage IIbでも、患者さんの背景、年齢、社会的立場、
  経済力、家族構成、予後に対する考え方などで、最適な医療は変わるはずです。
  それを、最近はエビデンスという言葉で横並びに治療しています。
  エビデンスは重要ですが、それを踏まえてどうするのか、どうしたいのか、
  治療までに十分医療者と患者とが話し合わないといけないのでしょう。」

Q  まだまだ緩和医療には、問題があるのではないでしょうか。

A 「あります。
  まだ、専門家がほとんどいない。
  また、日本人は医療者も患者も麻薬を使うのが極めて遅い。
  さらに、鎮痛補助薬といわれる抗うつ剤、抗てんかん薬などが保険で通らない。
  他にもいろいろあります。
  場合によっては、下半身を一度麻酔で完全に麻痺させた方が本人も家族も
  良い場合があります。そのほうが亡くなられるまでの間、平安が得られることが
  多いものです。」

Q  QOLはまだまだ普遍的な言葉ではないようですね。

  「QOLは便利な言葉ですが、この意味も一通りではありません。
   家族に壮絶な戦いを見せる方が本人のQOLが高い場合もありますし、
   家族のQOLも非常に重要です。
   そして、今のような医療者のQOLでは、まともな治療はできません。
   難しいことですが、やはり十分な対話以外には解決できないのでしょうね。」

このやり取りで、医療者も、患者との十分な話し合いを求めているのが良く理解できますね。
充分な話し合いのできない医療者を主治医に持った場合は、さっさと主治医を替えるのが
良いのではないかと考えています。
かかりつけ医も同じです。
先日書きましたように、検査だけして何の説明もせずに肺炎球菌ワクチン接種を
してくれないような医師にはさよならすべきでしょう。