(8)では、別の目的を持って行われていた実験で、予想していなかったことが起こったことを書きました。
実験に利用していたノックアウトマウスは(食細胞内で免疫系シグナル伝達の要となる〈Myb88〉と言われる分子をノックアウト)された個体だった。
この辺りが、読んでいて苛々するとおもわれるが、
そんなもんかと、軽く考えて下さい。
Myb88分子にシグナルが伝達されると、食細胞はサイトカインを出す。
偶然の大発見というのは〈Myb88分子〉に至る
シグナル伝達経路の上流に、リポ多糖に反応してショック状態の引き金をひく受容体が存在することを(示唆)していたのだった。
ところが、示唆に沿って、当時までに知られていた受容体を調べても該当する受容体は見付からない。
そこで研究者たちは知恵をしぼる中でもおもいついたのは、最近(当時の)になって報告されたばかりの、人間に存在する〈トル様受容体〉だった。
よく調べると12個の〈トル様受容体〉が見つかった。
マウスを12種の受容体ごとにノックアウトして、
リポ多糖の注射でなんの変化も起こさないマウスがいれば、それこそ目指しているトル様受容体をノックアウトしたマウスと言うことが判明する。
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それは(トル様受容体4)であることが判明したのだった。
1998年夏の事だった。
研究者達は、丁寧に確認をしてから論文を纏め、
科学専門誌の「ネイチャー」に投稿したのだった。
ところが皮肉な事に、論分送ったその日、1998年
12月のある日、
「トル様受容体4がリポ多糖を認識する」という
アメリカのボイトラー博士らの論文がサイエンス誌
に掲載された。
論文の発表は商法における特許出願と似ていて早い者がちだから、論文作成に念を入れていた日本の研究者達は惜しいことをしたとも言える。
なぜならば、ボイトラー博士はに゙2011年にノーベル、生理学、医学賞を受賞したのです。
無論、多くの研究が無になったわけではなく、免疫学の向上に大いに役立っているのは間違いのないことなのです。