医療には、さまざまな難しいことがあるものだ。
治療の選択肢が多い場合、どれを選べばよいのか、
最近では医師が患者にその選択を任せる場合も増えて
来ている。
医師の責任逃れと言えばそれまでだが、患者にとっては
厄介な問題を突きつけられるのだから辛い。
私は、年のわりには自分の歯が多くて自慢の種であった。
しかし、5年前から1本だけ厄介な歯があることも分っていた。
奥から3番目の歯には35年ほど前に治療した際に金属が
かぶせられている。その歯が時折痛むので、3か月に一度の
検診の際に、医師にその旨を伝えたところ、放っておけば痛みが
消えることもあるので様子をみましょうという。
確かにその通りになったが、問題の歯は時折痛くなっては収まる
ということが続いた。歯科医は、それでも、そのままにしておきま
しょうという。
昨年、体のあちこちが悪くなって歯科の定期検診をしないままに
約9か月が過ぎた。
このたび、妻の治療に伴ってこれまでと別の歯科医に診ていただいた。
どうして、こうなるまで放っておいたのですかと言われるほど悪くなって
いた。隣の歯も一緒に口腔外科で抜歯してもらい、そのままでは食べられ
ないので入れ歯にしましょうと言われた。
実はこれまで、わたしは自分の命の残りが少ないと考えていたので、
歯の積極的な治療を避けてきたともいえる。
今でも、そう思っているが、歯の状態は放っておけないところまで
悪くなっているので治療しなさいと歯科医は言う。
治療の選択にはいろいろあるが、ここに至って辛い歯の治療を受け、
入れ歯になってQOLが下がるとは情けないが、これも生きていくうえで
避けては通れない道なのだろう。