中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

がん発見法の功罪

  この前に、すい臓がんの早期発見法を考案した15歳少年のニューズを
紹介しました。
 このようなニュースに接すると、がんが早期に発見されて、進歩している
がん医療と併せ考え、がんで死ぬことはなくなるような気がしないではありません。
 新聞やテレビでこれまでにもさまざまながん発見法が紹介されてきましたが、
それらが実用化されているかと言えばそうではないのです。
 それはなぜでしょうか。
 一番わかりやすいのは、前立腺がんのマーカーであるPSAの発見です。
どの「がん」も、それぞれのがん特有のたんぱく質を作り出します。
タンパク質と言うと、肉や牛乳や卵を思い浮かべるでしょうが、人間には約10万種
ものタンパク質があるのです。
 がんが作り出すたんぱく質を簡単に検出することができれば、がんになっているか
どうかの判断に役立ちます。
 PSAというマーカーは血液検査によって検出します。4までなら安心、それ以上なら
前立腺がんに罹っているかもしれないという懸念になりますから、生体検査を
行いましょう・・と言われて、生研を受けます。お尻から10~12本の針を打ちこみ、
細胞を採取します。その結果、がんかどうかの結果が出るというわけです。
 PSA法が出現してから、前立腺がん患者が一挙に増えました。行倒れした高齢の
男性を解剖すると約半分が前立腺がんだといわれるほど、男性の前立腺がんが多い
ものですが、PSA法によって、がん患者が一挙に急増しました。
 しかし、正確に言えば、がんとは言えないものまで、がんと判定されたものも少なく
ありません。病理検査によって判定されますが、微妙なところで白か黒かという判断
の間違いが起こりやすいのです。
 世の中に「前立腺がん」と言われている患者の半分は、「がん患者でない」か、
あるいは「まったく治療の必要のないがん患者」がいると私は考えています。
PSA法によって、救われた人と、PSA法によって、がん患者として苦しむ人とが
現れたと思います。「がんの早期発見」は、早期発見というよりも、早期にがん患者を
作り出している可能性もあるということです。
 新しいがん発見法には、「敏感すぎて、がん患者を多く作り出す危険」が同居して
いるために、実用化が見送られる可能性も高いことになります。
 
「がんの早期発見」の意義は「治癒可能な、早期のがんをみつけること」につきます。
検診を受けないよりは受けたほうがいいのは間違いないことですが、どこで、
どんな検診を受けるかが重要です。同時に、仮に考えられる理想の検診を受ける
ことができたとしても、がん全体の約65~70%程度しか発見できないことを認識
すべきです。特に肺・乳腺・子宮体部・膵臓・胆管の本当の「治癒可能な早期がん」
をみつけることは困難です。
 がん検診によって、早期がんが発見されて、治癒できている人が多数いることも
事実です。また、ほとんどのがんは、かなり進行してくるまで自覚症状がなく、
自覚症状がでた段階では、すでに手遅れになっているケースが多いのも現状です。