中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

英国とEUと日本(3)イングランドとアイルランド

 (2)で、英国のEU離脱によってアイルランドのパスポートを申請する
 イギリス人が増えていることを書いた。
 この機会に、イギリスとアイルランドの問題について、20年前に書いた原稿の
 一部をここに掲載しておきたい。何事も歴史的な視点で考えることも大切だと
 思うから。
 これは1996年に差別について書いた記事の一端でもある。

        1996年JA・NEWS新聞掲載(差別は恐ろしい)抜粋記事


 ここでは、イングランドアイルランドの関係について
 書いてみたい。
 イングランドは、約八百年に亘ってアイルランドを植民地化

 してきた。その上、過酷な「差別制度」を作った。
  これは、イングランドのアングリカン・チャーチを、アイル

 ランドのカソリックアイリッシュカソリック)に押し
 つける形で作られた。

 アイルランドでは、ほとんどはカソリックだったから、これは

 アイルランドへの差別と考えて間違いないと思う。
  結婚の制限や、新たに土地を購入することを禁じ、法律家、医師、

 教師、軍人、警官になることを禁じる職業規制、或いは雇用制限と、
 限りない差別の上に、僅かの収入の内から十分の一をアングリカン・
 チャーチに収めなければならないという収奪をやっている。

 それだけではない。1649年には、史上希に見る大虐殺を

 やっているし、働き盛りの青年を奴隷としてアメリカに送ったりも

 している。       
 要するに、イングランドは、アイルランドを信じられないほどに

 締め上げ、差別してきた厳然たる歴史が存在する。
 そして、それが、途中で一部緩められたとはいえ、約八百年も続いたと
 いうのは驚き以外にない。世界史的に見ても、最も過酷な差別かも知れない。

 何と、アイルランドは、第二次大戦後に、やっと独立できたのである。
  アングリカン・チャーチは、日本では英国国教会といわれている、

 立教大学や大阪の桃山学院大学を作った母体である。

 カソリックに対してプロテスタントは、宗教上の争いから血みどろの

 改革闘争上できたもので、ヘンリー八世自身が、自分が離婚をしたいが
 ために、離婚を認めないカソリックから離脱して作ったものがアン
 グリカン・チャーチであることは周知の事実である。したがって、
 イングランドアイルランド差別は、宗教対立とは全く次元の違う
 ものであることはいうまでもない。

 八百年も虐げられてきたアイルランドは、十九世紀の半ばに、大飢餓で

 百万人もの餓死者を出し、百五十万人がアメリカやイギリスに移住して

 いる。
  アメリカに移住した子孫の中から、ケネディ大統領とレーガン大統領が

 出ているが、それまで、WASP(ワスプ=ホワイトで、アングロサク
 ソンで、プロテスタント)しかなれなかった大統領に、アイルランド系の
 人が就任したということは、アメリカにおける、一つの差別がなくなった

 時でもあった。
  また、イギリスに渡った移民の子孫の中から、あのビートルスのジョン・

 レノンが生まれているが、イギリスでは、今なお、アイルランド人に
 対する職業的な差別は存在する。