中原武志のブログ

生きていくうえでの様々なことを取り上げます

イスラエル/パレスチナ問題(2)

◆ 2015年のフランス誌テロ事件を考えるために、かなり以前に
  JAニュース新聞に連載したものを読んでいただいている。
  (3)まであるので続いて掲載したい。
  ご面倒でしょうが、読んでいただくと、フランス誌へのテロも見えてくるでしょう。 
 
   「世界を見る・考える」第 5回
 (イスラエルパレスチナ問題その2)

 この号の原稿は8月(2002年)に書いている。
 9月から10月にかけて講演のために帰国するからである。
9/26真宗大谷派主催=会場―東本願寺幌別院・「教育について」
10/6=大阪日豪協会主催=会場-大阪全日空ホテル・「パースで見たこと・考えたこと」
10/9阪南大学主催=会場-大学講堂・「世界を見よう」。
 以上三つの講演のほかにも日程が一杯である。パースに帰ってきてからの10/23には、
日本人学校での講演が予定されている。演題は「公教育において「正義」をどう教えるか」だが、
関心のある方は、日本人学校まで問い合わせていただきたい。

 さて、先月号でイスラエル国家成立までのいきさつを大急ぎで書いた。これほど簡単に書いた説明も珍しいので、どれだけ正確に伝わっているか心配でもある。イスラエルを敢えてユダヤとしたのは、イスラエルの中にもパレスチナ人がいるために、イスラエルと書くことは正確な表現にはならないからである。
 ユダヤ人に対する差別、虐待は世界中にある。それが正しいとか間違っているという問題以前
の感情がいつまでも世界中に広がっていることは否めない。
  イスラエル国家の成立はかなり強引だったので、世界の一部には大きな不満が起こったが、ちょうどその頃にドイツ軍のホロコーストによるユダヤ人大虐殺が大きな問題としてクローズアップされ、世界中の人々がユダヤ民族に同情を寄せたのである。もちろん、私もその一人である。オランダ・アムステルダムの川のほとりに「アンネの家」がある。そこを訪れた時も「アンネの日記」を思い出し、当時のアンネの暗く哀しく恐ろしい日々に心を馳せ涙したものだ。また、ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」にもロシアに於けるユダヤ人達の哀しい運命が描かれている。スティルバーグが描いた映画「シンドラーのリスト」を観た時には映画館で声を上げて泣いてしまったものである。世界の各地でユダヤ人たちが受けた差別、迫害を思うとき、彼らに故国を与えたいという強い気持ちを誰もが持つだろうし、私も持っている。
 一方ユダヤ人たちは、ドイツに於けるすさまじい差別や虐殺を世界に知らせていく中で、数字を膨らませ誇張していった可能性も指摘されている。だからと言って批判されるものではないが、それらはイスラエル建国時の強引なやり方の批判をかわす効果をもたらしたのは言うまでもない。
 日本軍の中国や韓国における行為を過大に表現し、日本とのあらゆる交渉に利用しようとする中国、韓国の姿勢にも通するものだ。被害者としてどんなに過大な表現をされても、加害者側はおとなしくしている以外にない。
世界のユダヤ
 イスラム国家群の中に、ある日突如として「イスラエル」と言う国家が成立した。1948514日のことである。アメリカ主導による国連がパレスチナの土地を、人口比例ではなく、人口比例とは正反対の「分割案」を提出し可決してしまった。それをユダヤ側が一方的に受諾し国家成立を宣言したのである。これは先月も書いた。問題は、どうしてそこまで強引なことができたのかと言うことである。その理由は簡単である。世界に散らばるユダヤ人の力が強大だからである。
 イギリス、フランス、イタリ-などに住むユダヤ人の力は大きい。言い換えるなら、戦後のフランス歴代大統領もイギリスのサッチャーも皇室も、あのダイアナ妃もユダヤと無縁ではないのである。ユダヤ金融の強大さは想像を絶する。日本にも大きな関わりがあるので触れておこう。日露戦争当時、日本は戦費が拡大して財政が困窮し、このままではロシアに敗れると言う時にイギリス政府に金策を頼んだ経緯がある。この時に日本政府に金を用立てしたのがユダヤ財閥だった。日本にとって命の恩人ともいえる。実は、ユダヤ財閥は、当時から戦争している両国に金を貸し、勝った方から利権などによる回収をはかり、巨大な儲けを蓄積していっていたのである。
 戦後はアメリカにおけるユダヤ金融資本が巨大化し、アメリカ政府の懐の奥まで食い込んでいる。因みに、クリントン大統領当時の閣僚を覗いて見よう。
 ロバート・ルービン財務長官/ローレンス・サマーズ財務長官/マドレーヌ・オルブライト国務長官/リチャード・ホルブルック国連大使/イリアム・コーエン国防長官/ダン・グリックマン農務長官/ロバート・ライシュ労働長官/ミッキ-・カンター通商代表・商務長官など12人がユダヤ人で占められている。もっとも凄いことは、デニス・ロス中東特使、アーロン・ミラー中東特使というこの問題を解決しなければならない担当特使と日本で言うならば外務省にあたる国務長官ユダヤ人であることである。このような顔ぶれで、パレスチナ人に対して公平な政策が取れるはずがない。なおアメリカの人口は27000万人で、ユダヤ人は650万人と言われるから約24%に過ぎない。どれだけユダヤの力が強大かがわかろうと言うものである。閣僚以外の政策を推進する部分でのユダヤ人の占める割合はもっと多くなる。イスラエル建国に向けてアメリカが国連をリードした背景も理解できるだろう。
 突然に生まれたイスラエルと言う国によって中東のアラブ諸国は戸惑いと混乱を招いた。やがて、アラブ諸国によるイスラエルへの戦争が始まるのだが、足並みの揃わないアラブ側は敗戦を重ねる。第1次中東戦争だけでイスラエルパレスチナ全土の70%近くを奪い取ってしまったのである。アメリカなどによる最新兵器供給によって近代武装されたイスラエルは、1967年の第3次中東戦争においても圧勝し、現在の地域を占領してしまって今日に至っている。
 七日間戦争と言われる第3次中東戦争のスピード大勝利によってイスラエルは優位に立ち、周辺のアラブ国家はおとなしくなり、パレスチナ人は孤立を深めていくのである。
 あまりにも複雑な問題なので、なるべく簡単に想像を逞しくして考えてみよう。あなたの家に居候をさせた人が、ある日突然「これは我が家である」と宣言して、あなたは家から放り出される。それを見ていた近所の人たちが、あなたを応援すべく相手に掛け合い、もみ合うが結局は負けて引き下がってしまう。あなたは行くところもなく住むところもない。そのあなたがパレスチナ人である。
  こんな状態で黙っているはずがない。争いが絶えるわけがない。絶えず争いがおこる。その度ごとに、世界の大国が仲裁に入り和睦を図ろうとするのだが、仲裁に入る大国にはそれぞれの思惑があって相手に満足を与えるものではない。
 第3次中東戦争によってヨルダン西岸地区とガザ地区というのが占領され、この両地区にパレスチナ人が押し込められ、イスラエル軍によって管理されている。この両地区はかなり隔たっていて自由に行き来は出来ない。パレスチナ人たちは、商売も自由ではない。自分の国とは認められず、イスラエルによる占領地域であるからである。
 ユダヤ人たちはパレスチナ人に対してどんな事をしたか
 ユダヤ人たちによるパレスチナ人に対する迫害はひどいものだったらしい。多くのマスコミ関係者の取材によってそれらは明らかになっている。それらの内容は本とかインターネットで調べれば多くの事実を知ることができるだろう。イスラエルの側ににしてみれば、戦争によって領土を勝ち取ったと考えているから、パレスチナ人は邪魔な存在に過ぎない。過去に自分たちが離散したように、今度はパレスチナ人たちが離散すればいいと考えているようにも受け取られる行為である。あらゆる機会を捉えてパレスチナ人を迫害するために、パレスチナ側がそれに対して反撃すると、事態はますます不利になるばかりであった。このような状況が35年間も続いてきたのである。
 昨年アメリカで9・11事件が勃発し、テロに対して厳しい制裁を加えるとブッシュが息巻き、世界中がテロ撲滅に乗り出している。
 長年の迫害、生活困難などの上にますますひどくなるユダヤパレスチナ人に対する迫害で、これまで時々しか行われなかったパレスチナ人によるイスラエルへの「自爆行為」が頻繁に行われるようになった。
 テロか反抗運動か
 今年の4月頃だったか、自由党の小沢党首が小泉首相に国会で質問した。「首相、パレスチナ人の若い娘たちまでが、自分の身体に爆弾を巻きつけてイスラエルにおいて自爆を行ったが、あれはテロなのですか?それとも迫害に対する抵抗運動なのですか?首相はどちらだと考えておられますか?」と。小泉首相はこの問いに直接には答えなかった。答えられなかったのだろう。小沢さんといえば、もともとは自民党の大幹部であるが、彼のこの質問に彼の正義をみた。うかつに返事できなかった小泉さんも、「テロ」だと言わなかった。両者の見識を評価したい。
 報道は平等か?
 しかし、新聞やテレビのニュースでは「自爆テロ」と言う表現がまかり通っている。自爆テロと解釈するか、イスラエルの弾圧に対する抵抗運動と考えるかは大きな違いなのである。現在パレスチナで行われている実態を考えればテロ行為ではなく抵抗運動と捉えるのが妥当だろう。
 イスラエルパレスチナ問題を考える時に、マスコミの一方的なニュアンスのニュースに不快感を感じる。どうしてこのように偏ったニュースがまかり通るのであろうか。答えは明確である。世界にはニュース配信会社と言われるものがある。これらの配信会社から送られてくるニュースが各新聞社、テレビ報道になって現われるのである。世界中の新聞、テレビの報道に大した違いがないのもそのためである。そして、巨大配信会社と言われるものはすべてユダヤ資本によって占められている。空恐ろしいほどの事実である。これでは、偏った報道になっても仕方がない。
 パレスチナアラファト議長が住んでいる建物をイスラエルの戦車で包囲して閉じ込めた映像がTVでも流された。このような映像を流しながらもパレスチナの側が悪いからだと言うニュアンスの報道姿勢になっている。信じられないことかもしれないが、民主主義の国と言われるアメリカの人たちが、先進諸国の中では最も事実を知らされていない人たちだと言われている。パレスチナの人々が現在どのような局面に置かれているのかも正確に知らされていない。報道と言うものが、いかに上手に管理され、力のある一方の側に有利に働くものであるかを如実に物語っている。
 若い男女までが腹に爆弾を抱いて自爆すると言うことは、「馬鹿げている」などというような言葉で締めくくって欲しくない。結婚を目前にしながらも、前途に全く希望を見出せないで爆弾を腹に巻く姿を想像して欲しい。かつて日本の若者達が、零戦に乗ってアメリカの軍艦に体当たりをした神風特攻隊や、一人しか乗れない魚雷艇に乗って敵軍艦に体当たりをして玉砕したことをテロと言うだろうか。戦争と言う言葉を使わなくても、その局面を見れば自ずから抵抗運動であることがわかる。9・11事件やパレスチナの行動をテロと位置付けることによって、自分たちを正義とし、テロの側を悪と決め付けようとする魂胆がそこには見られるのである。人々をそこまで追い詰めているものは何かを考えないで、一方の側のワナにはめられてはいけないのではないだろうか。「自爆行為」に対し、そのたび毎にイスラエルは、報復と称してロケット弾多数をパレスチナ居住区に打ち込み多くの民間人を殺傷している。こちらの方のニュースでは簡単に扱われているのはなぜだろうか。
 私達日本人は「忠臣蔵」が大好きである。毎年どこかのTV局で忠臣蔵が放送されないことがないのではないかと思えるほどに「忠臣蔵」は人気定番番組である。当事者同士の事の真相は別にして、喧嘩両成敗ではなく、幕府が一方を庇い、一方を切腹させたことから仇討ち物語は始まる。幕府の決定を不服とする赤穂浪士だけではなく、それを支援する人たちの力も借りながら仇討ちが成功する話である。赤穂浪士は幕府の決定にこのような形で異議を唱えたのだからテロ行為だと言わねばならない。しかし、我々日本人は、赤穂浪士を決してテロとは思いたくない。彼らは仇討ちの後、自分たちが死ななければならないことを知っていて行動したのだが、そこには彼らのサムライとしての正義があったからである。
 パレスチナの人たちの自爆は、物語にするような甘いものではない。彼らの正義によって命を賭し、爆弾を腹に巻いて出かけるのである。自爆によって相手側に与える打撃は平均して僅か数人程度である。それでも、明日に希望が見えない、閉塞され、抑圧された人たちにとっては、残されたパレスチナの人々に僅かの希望を与えるために、自ら腹に爆弾を抱えるのだ。